都内の中小メーカーに勤める33歳独身のサラリーマンAさん。プライベート重視型の性格で、仕事に対する意欲は低く、「このままほどよく楽しい人生が続けばいいなあ」と考えています。とはいえ、なにもしないまま老後を迎えると「老後破綻」の危険性も……。FP Office株式会社の重松美穂FPが、Aさんが「このまま独身の場合」と「36歳で結婚した場合」の2パターンに分けて、老後に必要な資産額をシミュレーションします。
年収450万円“仕事ギライ”の33歳・独身サラリーマンの夢「定年後、死ぬまで働かない」…叶えるために必要な金額【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

家庭を持つと一気に変わる「お金の使い道」

現在結婚に興味はないというAさんだが、仮に36歳で結婚し、2人の子どもに恵まれた場合はどうだろうか。

 

・36歳で、2歳年下の会社員女性と結婚
・37歳で第1子、39歳のときに第2子が誕生し、それぞれの大学卒業までの資金を用意する

 

現在の状況に上記2つの条件を加え、改めてAさんが100歳になるまでいくら必要か試算すると、必要資産額は約5億円となった。

 

支出のピークはAさんが57歳のときで、子ども2人の大学授業料が重なる時期となるため、教育資金と老後資金の準備を行える期間、つまり「貯蓄のゴールデンタイム」は子どもたちが生まれてから大学に入学するまでの約18年間となりそうだ。

 

また、結婚するタイミング(Aさんが36歳のとき)で返済期間35年の住宅ローンを組んだ場合、ローン完済時の年齢は70歳だ。繰り上げ返済を行わないのであれば、定年退職以降も5年間は住宅ローンの返済が続く。収入以上の返済額を抱え、年金や退職金を原資として返済を行わなければならない。

 

さらに、Aさんが万が一死亡したり、重い病気にかかるなどして働けなくなった場合、独身のときと比べて、家計へのダメージは格段に大きい。遺された家族が安心して生活を送れるよう、「もしも」に備える必要があるだろう。

 

Aさんが結婚し家庭を持つ場合は、独身の場合に加えて以下の3点に注意する必要がある。

 

1.住宅ローンの借入金額を無理のない範囲に収める
2.教育資金・老後資金の準備を計画的に行い、家計に合った資産運用を活用する
3.働けなくなった場合の「家族への保障」を準備する

 

無対策はキケン…リスクに備え早めの計画を

生涯独身を貫くケースでは、金融資産は老後に向けて順調に増えていくことが予想されるが、貯まっていく金額が大きくなればなるほど「資産を守る策」を講じたい。この場合、「使っていいお金」と「使ってはいけないお金」をしっかりと分けることが重要だ。

 

また、働けなくなった場合のリスクマネジメントを行い、最低限の保障を用意しておくことも大切である。そうでないと、気づいたときには老後に生活していくのに必要な資金が尽きる「老後破産」に陥ってしまうだろう。

 

結婚して家庭を持つ場合は独身の場合に比べ、お金について考えるべきことが当然増える。Aさんの給与の上昇具合と妻の働き方によっては、住宅資金や教育資金に悩むことも考えられるが、しっかりとライフプランを立て、無理のない範囲で住宅ローンや資産運用を利用することで、幸せな家族との生活を送ることができるだろう。

 

「独身」と「結婚」どちらを選択するかに関わらず、楽しく幸せな人生を送るためには現在の状況を把握し、未来の計画をしっかりと立てたうえで行動することが重要だ。

 

また、“仕事嫌い”のAさんへひとつ伝えておきたいことがある。年功序列・終身雇用の崩壊はすでに始まっており、上司と同じ年齢になったとき、現在の上司の給与や待遇を同じように受けられるとは限らないということだ。仕事内容が嫌いなのか、働き方が合わないのかは筆者にはわからないが、最近ではテレワークやフレックスタイム制度、副業制度などを取り入れ、働き方に多様性を持たせる企業も増えている。

 

「いかに働かないか」を考えて資産形成するのもいいが、「仕事をもう少し好きになる」という選択肢も入れてみてはいかがだろうか、と筆者は提案したい。

 

<参考資料>

金融広報中央委員会「令和4年度 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」

総務省公表「家計調査報告書 家計収支編(2021年)」

厚生労働省「年代別・世代別の課題(その2)」

金融広報中央委員会 知るポルト「設問間クロス集計(令和4年)」

 

重松 美穂

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー