通勤などで毎日都心に通っているうちに「いつかあのタワーマンションに住みたい」と思うようになり、夢を膨らませているというビジネスパーソンもいることでしょう。しかし、物件価格のみに囚われて勢いで購入に踏み切るのは注意が必要です。世帯年収1,600万円のM夫妻の事例をもとに「タワマン暮らし」のリスクと購入検討時のポイントについてみていきましょう。
世帯年収1,600万円の38歳パワーカップル…“ノリと勢い”で購入した「1億円・都心タワマン」に大後悔のワケ【FPが注意】 (※写真はイメージです/PIXTA)

バリバリ稼ぐパワーカップル、“ノリでタワマン購入”でハマる「落とし穴」

「パワーカップル」の定義はさまざまですが、一般的には夫婦ともに年収700万円以上を稼ぎ、世帯年収で1,400万円以上あることが一般的な条件のようです。

 

ともに38歳のM夫妻は、まさにパワーカップルといえる2人です。世帯年収は1,600万円で、生活にゆとりが出てきたことをきっかけに、ずっと憧れだった都心のタワーマンションを購入しました。

 

夢のタワマン生活に胸を躍らせる2人でしたが、今後のライフプランを見直そうとFP事務所を訪れた際、タワマン暮らしの「思わぬ落とし穴」に気づくことになったのです。

 

1億円のタワマンを買った場合の「総返済額」は…

頭金は物件価格の2割として2,000万円を用意し、残りはローンを活用します。返済負担率が20%で、30年のペアローンを組んだとします(返済方式:元利均等、返済金利:1%)。

 

すると、借入額は8,000万円、毎月の返済額は25.7万円、利息は約1,263万円、総返済額は9,263万円になる想定です

※ なお、住宅ローンの借入金は年収の7.1倍まで借りられるといわれています。

落とし穴1.「管理費」「修繕積立費」は通常の分譲マンションの約1.4倍

物件価格のみに囚われてタワマンを購入した結果、思わぬ出費増で家計破綻のリスクに直面するパワーカップルが後を絶ちません。出費増の要因は、主に「管理費」や「修繕積立費」にあります。

 

管理費は主にマンションの共用部の管理のために使用され、エントランスや廊下などの清掃費、共用部の光熱費、エレベーターや自動ドアのメンテナンス費などが含まれます。

 

ただしタワマンの場合、ここに加えゲストルームやラウンジ、フィットネスジムなど、通常の分譲マンションにはない設備を売りにしているところが多く、その分管理費も高くなりがちです。タワーマンションの平均管理費は月額2万1,420円※1と、通常の分譲マンションの1.4倍となっています。

 

また、マンションの建物部分や設備などの修繕費を賄うために毎月徴収される「修繕積立金」も、タワーマンションは通常のマンションに比べて高額になります。

 

通常、マンションは10~15年に1度大規模修繕が実施されます。一般的なマンションの場合は1戸あたり75万~100万円が相場ですが、タワーマンションの場合はその1.5~2倍程度が必要になります。タワーマンションの平均修繕積立金は月額1万3,699円※2となっています。

※1、※2 国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より

 

しかし、将来の大規模修繕のために積み立てておくこの「修繕積立金」ですが、タワーマンションの場合、その多くが実際の工事の際は“これだけでは足りない”といわれています。タワーマンションは、分譲時に費用を抑えて販売することが多いためです。また、住んでしばらく経ってから修繕費が大幅に増額されることも懸念されます。

 

ただし、これも修繕費の値上げに同意が得られなかったり、滞納者が増えた場合は、最終的にそのタワーマンションが“スラム化(荒れ放題)”するリスクがあります。新築時は問題がなくても、数十年後に深刻化する恐れがあるのです。