2025年以降の揺れる世界と不安定になる株式市場
2025年、世界経済のパワーバランスが大きく揺らいでいます。特に、米国のトランプ共和党政権のもとでエスカレートした各国間の貿易摩擦や通貨への不信感、地政学リスクの高まりが背景となり、市場はまるで荒波のように不安定になっています。
実際、トランプ政権が主要貿易国相手に次々と関税を課す「貿易戦争」に踏み切ったことで投資家心理が冷え込み、S&P500株価指数は1ヵ月で約4兆ドルもの時価総額を失う事態となりました。企業経営者や投資家は先行きの不透明感に戸惑い、「これまでうまくいっていた投資法が通用しなくなった」との声も聞かれています。
さらに、米中対立やロシア・ウクライナ紛争などの地政学的緊張も相まって、世界経済は協調より分断が目立つようになりました。
2025年の世界秩序は流動的で、不確実性がかつてなく高まっているといわれています。
実際、トランプ大統領復帰後の2025年第一四半期は「貿易戦争と米国の地政学的変化が市場を支配した」と報じられ、株式市場ではアメリカのハイテク株が急落する一方、中国株やヨーロッパ株が急伸するといった波乱も起きました。
表面上は世界全体の株価指数が横ばいでも、その裏では国ごとの明暗がくっきり分かれる「乱高下の波」が押し寄せているのです。
こうした不安定な状況下では、安全資産とされるものに資金が集まりやすくなります。
実際、2025年に入って“究極の避難港”とも呼ばれる金が急騰しており、四半期ベースで1986年以来最高の上昇を記録しました。
一方、米ドルは信頼感が揺らぎ、2008年の世界金融危機以来最悪の滑り出しとなっています。貿易摩擦によるインフレ懸念や各国の報復措置への不安から「ドル離れ」の動きが広がりつつあるのです。
米政権も市場の下落をいとわず強硬策を続けており、「景気後退(リセッション)になってでも政治目標を優先する構えだ」という市場関係者の指摘もあります。まさに経済政策の大転換期にあるいま、株式市場はジェットコースターのような激しい上下動を見せています。
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米国の景気後退は「共和党政権」下で深刻化する?
株式市場の不調が長引けば、やがて経済にもブレーキがかかり「景気後退(リセッション)」に陥る可能性があります。
アメリカでは過去に何度も景気後退が起きていますが、その多くは共和党の大統領在任中に始まっていることをご存じでしょうか。
実際、第二次大戦後から2020年までに発生したリセッション11回のうち、10回が共和党政権下で始まったというデータがあります。
もちろん偶然や外部要因も大きいでしょう。しかし、歴史を振り返ると共和党政権の時期に深刻な経済危機が重なっているというのは興味深いポイントです。
たとえば1929年に始まった世界恐慌(Great Depression)は、共和党フーバー大統領の任期中に発生し、失業率25%に達する未曾有の大不況となりました。
また近年では、2007~2009年の世界金融危機(いわゆるリーマン・ショック)も共和党ブッシュ政権の末期に起こり、1930年代以来最悪の経済落ち込みとなりました。
この「世界金融危機」は、住宅バブル崩壊をきっかけに金融システムが機能不全に陥り、銀行の破綻や株価の暴落が連鎖しました。米S&P500はピークから半値近くまで急落し、多くの企業や家庭が大打撃を受けたのです(参考:S&P500は2007年10月の高値から2009年3月にかけて約57%下落)。
景気を立て直すため、米政府・FRB(米連邦準備制度)は前例のない規模の財政出動や金融緩和を行いました。それほどまでに2007〜2009年のリセッションは“戦後最長・最悪”の不況だったのです。
この他にも、共和党ニクソン政権下の1973年~1975年のオイルショック不況や、レーガン政権下(当時は高インフレ抑制のための政策も背景にありましたが)の1981年~1982年の景気後退など、歴史上何度も経済の荒波が襲いました。
民主党政権でも景気後退は起こっていますが(例:2001年のITバブル崩壊後の後退は共和党政権始動直後でしたが、実質的にはクリントン民主党政権期の投資バブルが原因ともいえます)、総じて「大きな危機」は共和党政権期に集中している印象があります。
この原因について、「小さな政府」を志向する共和党は規制緩和や市場原理を重視するあまり金融リスクを蓄積させやすい、などさまざまな分析がなされています。ただいずれにせよ、現在のように共和党政権が舵を取る局面では、投資家として慎重になるに越したことはありません。
歴史は繰り返す……とは限りませんが、「備えあれば憂いなし」です。過去のケースを知っておくことで、私たちは今後起こりうる危機にも落ち着いて対処できるでしょう。
〈共和党政権下の景気後退の特徴〉
■レーガン政権(1981~1982)
・深刻なインフレ抑制のための高金利政策に伴うリセッション。
・高失業率が問題となったが、その後の回復も早かった。
■ジョージ・H・W・ブッシュ政権(1990~1991)
・湾岸戦争、原油価格高騰など複合要因。
・雇用減、消費低迷、景気悪化が顕著だった。
■ジョージ・W・ブッシュ政権(2007~2009)
・サブプライム住宅ローン問題に端を発した「世界金融危機」。
・深刻な金融崩壊、大規模な失業、経済活動の停滞。
・この時期の経済ダメージは特に深刻で、世界規模で影響をもたらした。
■トランプ政権(2020)
・COVID-19パンデミックによる異例の急激なリセッション。
・短期間で史上最悪レベルの失業率増加。
〈民主党政権下の景気後退の特徴〉
■トルーマン政権(1948~1949)
・第二次大戦後の経済調整による比較的短期間の不況。
■カーター政権(1980)
・インフレと高金利政策による一時的な不況。
・短期間だが失業率・インフレ率の悪化は顕著だった。
■オバマ政権(2009年就任時)
・オバマ大統領は2009年1月に就任したが、リセッションは共和党ブッシュ政権時に始まっており、オバマ政権下で回復に転じた。
・経済対策によって徐々に景気は回復。
■バイデン政権(2024)
・深刻なリセッションは起きていない(2024年に懸念はあったものの、大きな景気後退には至っていない)。
〈総じての比較と評価〉
共和党政権下のリセッションは、「サブプライム危機」や「COVID-19ショック」など、近代史上の経済ダメージとして大規模で深刻な事例が含まれています。特に、2007~2009年の世界金融危機は、世界経済全体に甚大な影響を与えました。
民主党政権下では、一時的な不況や比較的短期間の調整型リセッションが多く、大規模な金融危機に発展した例は共和党政権に比べると少ない傾向があります。
株式投資から“一歩距離を置く”タイミングとは?
では、具体的にどんなときに「株式から一歩距離を置く」判断をすべきなのでしょうか。株価が上がっているときは誰しも楽観的になりますが、初心者でも見極めやすいサインがあります。
1.景気の過熱感が強まりすぎたとき
たとえば、景気の過熱感が強まりすぎたときです。株価が企業の実力以上にどんどん上がり、「バブルかも?」と感じるような状況は要注意でしょう。実際、2000年前後のITバブル崩壊や2007年の住宅バブル崩壊前も、直前まで「今回は永遠に上がり続ける」などと楽観論が広がっていました。
しかし、そうした楽観がピークに達したときこそが転換点となりがちです。
2.景気の先行きに暗雲が立ち込めたとき
また、景気の先行きに暗雲が立ち込め始めたときも、株式への比重を下げるタイミングといえます。
ニュースで「〇〇ショック」「〇〇危機」といった言葉が飛び交ったり、失業率や企業倒産件数が増え始めたり、中央銀行(日本なら日銀・アメリカならFRB)が急激な利上げを行っているときなどが該当します。
景気後退の予兆として有名なのは長短金利の逆転(長期金利より短期金利が高くなる現象)ですが、これは少し専門的ですよね。
簡単にいえば「お金を借りるコスト」が急上昇しているときは、景気がブレーキを踏まれつつある兆しです。こうした局面では、株価は将来の業績悪化を織り込んで乱高下しやすくなります。
実際、米国では、リセッション入りが意識され始めた2007年や2020年初頭(コロナ禍)の前後に、株価が激しく上下しました。市場が悲観ムードに傾いているときは、一時避難も戦略のひとつです。
たとえば、株式市場が「大海原に浮かぶ船旅」だとしましょう。晴天が続くうちは航海(=株式投資)を楽しめますが、天気図に大きな台風が映り始めたらどうするでしょう?
――船長は安全のために一時的に港に避難しますよね。
それと同じように、経済の“嵐の予兆”を感じたらポートフォリオを見直し、安全な資産という“避難港”に一時退避することが大切です。
避難のタイミングを見極めるのは難しいですが、「欲張りすぎない」ことも大切です。周囲がまだ熱狂しているなかで少し早めに距離を置くのは勇気がいります。しかし、大事な資産を守るためには、「逃げるが勝ち」の場面もあると心得ておきましょう。
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通貨の信頼が揺らぐときこそ、“世界最強通貨”の「金」が輝く
不安なときに頼りになるのは、現金(法定通貨)だけではありません。“通貨そのもの”への信頼が揺らぐ局面こそ、金(GOLD)の出番といえるでしょう。
私たちが普段使っている円やドルといったお金は、国家の信用によって価値が支えられています。しかし、巨大な財政赤字や金融緩和の乱発、政治的混乱や戦争などで「その国の通貨は大丈夫かな?」と人々が感じ始めると、紙幣の価値が目減りするリスクが高まります。
インフレが加速して物価が上がると、手元のお金の購買力(価値)はどんどん減ってしまいます。皆さんも最近実感しているかもしれません。
そんなとき、世界中の投資家が歴史的に頼ってきたのが「金」という資産です。
金はどの国の政府にも属さない世界共通の価値の塊で、その希少性ゆえに昔から“本当のお金”とも呼ばれてきました。
米国の大富豪J.P.モルガンはかつて「金こそがマネー(お金)であり、それ以外は信用にすぎない」と語ったほどです(1912年、米議会での証言)。
金は希少であるがゆえに乱造できず、価値がゼロになる心配もまずありません。紙幣とは異なり誰かの信用や約束に依存しないため、極端な話、世界中の通貨が信用を失っても最後に残る“真の通貨”としての強さを持っています。だからこそ金は「世界最強通貨」とも呼ばれるのです。
実際、市場が混乱期に入ると、投資マネーは金へ逃避する傾向があります。2007年に株式市場が崩壊した際には、安全な選択肢を求めて金への投資需要が急増した結果、2007年から2011年にかけて金価格は2倍以上に跳ね上がりました。
同じように2020年のコロナショックの際にも、人々の不安が高まるなかで金の上場投資信託(ETF)に記録的な資金流入が起き、金価格は史上最高値を更新しました。
このように、金は有事に強い安全資産として際立った存在感を発揮します。各国の中央銀行もその価値を認めており、2022年には中央銀行による金の購入量が過去最多を記録しています(地政学リスクへの備えやドル資産からの分散の目的があるとされています)。金は国の裏づけがなくても皆が価値を認める“究極の通貨”なのです。
では、なぜ「通貨の信用不安」の局面で金への期待が高まるのでしょうか。それは、インフレや通貨安で紙の貨幣(フィアット通貨)の価値が目減りするときでも、金はその価値を保ちやすいからです。
著名なファンドマネージャーも「インフレでドルや円の価値が減る局面では、金のように紙の資産と違って価値が目減りしないものを持つべきだ」と指摘しています。
極端なインフレに見舞われた国では、紙幣より金のほうが重宝されるという事例も歴史上少なくありません。金そのものは利子を生まない資産ですが、「貸して増やす」ことができないからこそ、無限に増刷される紙幣と違って希少性が保たれます。
いわば、どっしりと腰を据えた重石のように、他の資産が嵐で飛ばされるなかでも価値の重みを失わないのです。
もちろん、平時には金価格が冴えない時期もあります。経済が順調でみんながリスク資産(株式など)に夢中になっているとき、金は“地味”で脚光を浴びにくく、価格が停滞したり下落したりすることもゼロではありません。
しかし裏を返せば、それは「他に安心材料がないときこそ金が輝く」ことを意味します。世界景気や通貨への信頼がグラグラと揺れるとき、金は何百年も変わらずそこにある安心材料となってきました。まさに“有事の金”なのです。
不安な時代だからこそ、賢く資産を守ろう
ここまで見てきたように、2025年以降の世界は貿易摩擦や通貨不安、地政学リスクなど不透明要因が増し、株式市場も波乱含みとなっています。不況の足音が聞こえたら、慌てて走り回るのではなく、一度立ち止まって嵐をやり過ごすことも大切です。
そして「いざ」というときの避難先として、金(GOLD)という資産をポートフォリオに組み入れておく意義をぜひ考えてみてください。
金は世界共通のお守りのようなもの。「不安なときほど頼れる資産」として、その価値を歴史が証明しています。
大切な資産を守るために、そして将来の安心のために、株式一本槍にならず金への配分を増やすことも検討してみてはいかがでしょうか。
初心者でも心配はいりません。金投資は手軽にできる方法も増えていますし、なにより「備えあれば憂いなし」です。不確実な時代を賢く乗り切るために、金という安定資産を上手に活用していきましょう。
最後に、難しい専門用語は抜きにしてひと言でまとめるなら
――これが私からの提言です。
不安定な世界情勢のなかでも、大切な資産を守り育てていく一助になれば幸いです。トランプ政権はあと4年。どうぞ引き続き賢明な資産運用を心がけてください。
小川 竜一
コインパレス 公式アンバサダー
アールトラスト・インベスターズ株式会社 代表取締役