低賃金で話題になることが多い非正規社員。そのため、多くの人が正社員を目指しますが、さまざまな事情から「あえて非正規社員」でいる人がいます。それでも将来を見据えて「やはり正社員に」とリカバリーを目指す人は多いようです。しかし、そこで心をよぎるのが「もう手遅れなのでは」という不安。果たして「私、正社員になる!」にタイムリミットはあるのでしょうか。
月収25万円・38歳の独身男性「夢追ってあえて非正規」も「そろそろヤバいかも…」一念発起で正社員を目指すも手遅れか? (※写真はイメージです/PIXTA)

夢を追い求めて38歳「そろそろヤバい!?」…正社員になったら将来の年金額どうなる?

――そろそろ、正社員にならないとヤバいかも。

 

そうSNS上でつぶやくのは、38歳の独身男性。「夢を追い続けたいから」と、大学を卒業して以来、ずっと非正規社員として職を転々としてきたといいます。ただ両親が現役を引退し、年金生活に突入したころから少しずつ心が揺れだしたといいます。

 

ゆうちょ財団が行った『第5回(2022年)家計と貯蓄に関する調査結果概要報告書』で「公的年金でまかなえる家計支出の割合」を聞いたところ、100%を超え、年金だけで暮らしていける世帯は21.9%。つまり高齢者の8割は「年金だけでは生活できない」ということになります。大多数の高齢者が足りない分は貯蓄を取り崩したりして、暮らしていくことになります。

 

そんな生活を目の当たりにしたこともあるのでしょう。将来への漠然とした不安がよりはっきりとしたのかもしれません。一方で「いまさら正社員になっても……」という諦めの気持ちもあるのだとか。

 

前出の『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、男性の同期の正社員は月収で37.8万円、賞与も含めた年収は637万円。一方、男性が大卒・非正規社員の平均的な給与を手にしているとすれば、月収は25.3万円、年収は372万円。両者には月12.5万円、年収で264万円の差が生じています。

 

大学卒業以来、正社員として60歳まで働いていたとしたら、65歳で受け取れる厚生年金は14.7万円。国民年金が満額支給だとすると月21.6万円。一方、男性がこのまま非正規社員だった場合は、年金は月額14.3万円。両者の差は、月7.3万円、年間90万円弱になります。過半数の高齢者が「収入は公的年金だけ」という状況を考えると、月7万円の差はかなりのものです。

 

もし男性が39歳から正社員となり、同世代と同水準の給与を手にするようになったとしたら、65歳から手にする年金はどれくらいになるのでしょうか。単純計算ではありますが、厚生年金部分は13.1万円、国民年金と合わせると19.5万円ほどになります。30代後半では年収で264万円もの差が生じていますが、将来の年金差でみると、月1.5万円ほど。まだ正社員になるのを諦めるのは早いといえるのではないでしょうか(関連記事:『【早見表】大卒男性「非正規→正社員になる年齢別」将来の年金額』)。

 

ただ年を重ねるごとに正社員と非正規社員の給与差は拡大し、年金にも大きく影響します。特に給与差が一気に広がる40代は、将来の年金額でも大きな差となって現れるでしょう。「40代を前に正社員を目指す」というのは、老後の安心という点では良い選択だといえそうです。