令和4年、日本の在留外国人数は過去最高となり、今後も増加していくと予想されます。日本で永住を目指す人も多いなか、在留外国人に対する金融機関の条件は厳しく、持ち家の取得には大きなハードルがあるといいます。本記事では、30代・日仏カップルの事例とともに、日本における在留外国人の住宅事情について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収1,200万円でも「住宅ローンは借りられません」…30代・日仏カップルが撃沈した、在留外国人の“厳しい住宅事情”【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

30代日仏カップルの住宅購入の事例

夫Pさん:38歳 国籍 フランス 年収800万円 貯蓄1,600万円

妻Mさん:36歳 国籍 日本 年収450万円 貯蓄1,300万円

 

夫のPさんはフランス人です。東京の大学に留学してから一度母国に戻ったものの、数年後に日本企業に就職し再来日。友人の紹介で知り合ったのが妻のMさんでした。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

日本に永住して働きたいというPさんの意向を聞いて、Mさんは日本の制度で結婚をしようと考えましたが、Pさんは「入籍という形は取りたくない」といいます。

 

役所の手続きを取らなくても家族になれるというPさんの考え方にMさんは少し驚きましたが、調べてみるとかつてのフランス大統領だった人物も長年事実婚を続けていたと知り、お国柄の価値観なのだろうと納得しました。愛情深い性格のPさんですから、「入籍という形にこだわらなくてもいいか」とMさんは考えるようになりました。

 

日本の言葉でいうところの「内縁関係」として駅に近い賃貸マンションで暮らしていましたが、夫のPさんが「郊外の静かな環境で暮らしたい」「できれば一軒家がいい」と言い出しました。通勤時間が長くなるものの、休日は落ち着いて過ごしたいと考えるようになったのです。

 

最初は戸建ての賃貸物件を探していましたが、理想に近いものは皆無でした。料理上手な2人にとって、昔ながらの日本家屋のキッチンは狭く、2人で作業できるような空間ではありません。それに古い賃貸物件は畳の部屋が多く、日本人でも昨今は住みにくさを感じる人も増えているなか、フランス人のPさんにとってはなおさらです。

 

せっかくなら持ち家として戸建て住宅を購入してはどうかとMさんが思いつきました。建売りではなく、注文住宅として自分たちの希望どおりの間取りを設計してもらおうとPさんにいうと、大賛成でした。

 

少し調べてみると、入籍していなくても内縁関係であれば収入合算して共有名義で住宅ローンを借りられる銀行も多いことがわかりました。世帯年収は1,250万円あります。ネットでの情報によると年収の6倍程度が借りられる金額の目安のようです。ということは「7,500万円以下であれば借りられる可能性が高い」と思い安心したのですが……。最初に訪問した住宅メーカーで営業マンにこう告げられます。

 

「基本的に永住者でなければ住宅ローンは借りられません」

 

妻のMさんはハッとしました。夫のPさんは永住権を持っていないのです。日本に来てまだ10年経過していないので永住許可申請の審査対象になりません。結婚によって永住許可を得ることも可能ですが、Pさんは結婚という形を望んでいません。さらに、夫のPさんは高速道路でのスピード違反(50km/hオーバー)で罰金刑となったことがあるのです。反省を見せたため在留資格に影響はありませんでしたが、罰金刑を受けると永住許可は当面のあいだは難しくなってしまいます。

 

妻のMさんが、自分が単独で住宅ローンを借りて住宅を購入するのはどうかと住宅営業マンにいったところ、「弊社の物件を買うには奥様の収入では足りませんね……」と冷たく言われてしまいました。Mさんの年収だけでは3,000万円程度の融資が精一杯で、これでは希望する住宅は手に入れられません。

 

そこで、「永住許可のないPさんが住宅ローンを借りる手段はないのか」と弊社に相談され、FPがいくつか金融機関を調べてみました。永住許可がなくても住宅ローンを融資してくれる金融機関はいくつか存在しました。しかしそれぞれの金融機関によって条件が大きく異なり、どうも一筋縄ではいかないようです。

 

永住権のない在留外国人も審査できる金融機関

A銀行:中国国籍の方向けであることと、返済期間が最長20年と短い。

 

B銀行:永住権のない外国人向けと明記してあり、金利はやや高めだが返済期間は最長35年と一般的な住宅ローンと同じ。家族の収入合算もできるが内縁関係も含めるかは不明。

 

C銀行:返済期間は15年まで。金利は店頭表示の金利に1%を上乗せしたものと極めて高い。

 

D銀行:外国人向けという単独の商品はないが、審査を受け付けている。しかし永住権を持つ配偶者、あるいは日本人の配偶者が連帯保証人になることが条件。

 

E(ノンバンク):金利は変動金利で3%後半~4%後半と極めて高い。しかし独自審査の余地があり自己資金が用意できて担保価値の高い物件であれば審査に期待が持てる。

 

F銀行:配偶者がいる場合は連帯保証人にすること、日本語での読み書きの意思疎通ができることが条件。

 

G銀行:主に富裕層向けだが、英語表記での契約書が可能。ただし預金総額が1,000万円以上ある場合に金利を優遇する。

 

夫のPさんにとって現実的なのはB銀行、もしくはE(ノンバンク)ではないかと判断しました。妻のMさんが自己資金として1,000万円を出し、夫のPさんが単独で4,000万円の住宅ローンを借りて5,000万円という資金計画ができます。土地、建物ともに共有名義で登記します。

 

今後の計画としては、Pさんが永住許可を得られたら住宅ローンの選択肢が格段に増えるため、そのときに金利の安い銀行に借換えをすることにしました。2人の「世帯年収」が十分あることから、今後の返済計画は問題がありません。Pさんは速度違反などに気をつけて、数年後の永住許可を目指すことで住宅ローンの返済額が減っていき、家計にとって有利になります。