本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について、日本と比較しながら紹介していきます。
日本の保護者「忙しくて家庭学習なんて見ていられない」と苦情…→一方、教育先進国オーストラリアで見られる「工夫と対策」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「長ければよいわけではない」家庭学習は保護者も一緒

オーストラリアでは、家庭学習もカリキュラムの一部として重視されている。学校は「ホームワークポリシー」を策定し、保護者にも協力も求めている。

 

小学校ではたいてい宿題が出される。中学校も出されることが多い。「宿題は終わったの?」と保護者が口癖のように言うのはそのせいかもしれない。

 

宿題は、読書、プリント、教科書に関連する課題、レポートの草稿、プロジェクト学習の調査などで、授業でやり残したことを完成させたり、コンピュータで作業したりすることも家庭学習となることがある。小学校の、特に低学年の宿題は読書が圧倒的に多い。

 

いずれにしても、目的が明確で、生徒のニーズに合ったもの、学年レベルに適したもの、個々の学習ニーズに対応したもの、授業に結びつくもの、自立した学習者の育成を促すものが重要とされている。各州は家庭学習のガイドラインを作成し、目的や意義、実施方法、時間の目安、保護者の関わり方などを示している。

 

家庭学習の目的は、授業で学んだことを家庭で復習し、定着させ、次の授業につなげることであり、特に、小中学生にとっては自律的な学習習慣を身につけることが重要な目的となっている。

 

家庭学習は1日単位、週単位、2週間単位などで取り組み、目安としては就学前教育で短時間の読書、1~3年生で1日15~20分、4~6年生で週2~3時間、6~7年生で週3~4時間、8~9年生で週5時間程度の学習とされている。

 

必ずしも学習時間が長ければよいというわけではない。短時間でも目的をもって、集中して行うことが効果的だとされている。家庭学習には保護者の関わりが推奨されている。そのためのマニュアルを配布している学校もある。