本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について、日本と比較しながら紹介していきます。
駅前で「募金お願いします!」「集めたお金はどうするの?」「…」答えられない日本の中学生。→一方、オーストラリアでは「自分で使います!」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「ご協力お願いしまーす!」募金を呼びかける中学生

■年末の日本で

 

年の暮れ、日本の中学生が駅前で募金集めをしていた。複数の生徒が募金箱を両手に抱え、「ご協力お願いしまーす!」と道行く人に呼びかけている。近づいて話しかけてみた。

 

私:何の募金? 生徒:歳末助け合いの募金です。

 

私:誰を助けるの? 生徒:困っている人です。

 

私:困っている人ってどんな人? 生徒:……。

 

私:日本の人? 外国の人も? 生徒:お金のない人……かな?

 

私:集めたお金はどうするの? 生徒:赤十字に送ります。あれ、ユニセフだっけ?

 

私:お金はどんなふうに使われるの? 生徒:……。

 

私:使い方とか調べたりしないの? 生徒:特には……。

 

私:募金集めはよくやるの? 生徒:毎年やってます。委員会活動なんです。

 

私:自分たちのためには集めたりしないの? 生徒:自分たちのためですか……? それは、ちょっと……。

 

私:………。

 

うるさいおばさんと思われたかもしれない。でも、募金活動をする日本の子どもたちを見ていると疑問を感じることが少なくない。募金の趣旨をよく理解しないでやっていることがあるのだ。

 

実施団体や募金の使われ方など何も調べずにただ声をあげている。なんとなく「良いこと」をやっているという気分になっているだけのように見える。少なくとも私が投げかけた質問にはしっかり答えられてもよいのではないだろうか。

一方、オーストラリアでは…

■盛んな資金集め

 

ランチタイムに、生徒が自分たちで作ったクッキーを売りに来た。他州で行われるスポーツ大会に参加するため、資金集めをしているという。1袋3ドル。

 

先生たちがポケットマネーを出して買っている。私も買って食べた。美味しかった。中庭ではホットドッグやハンバーガーを売っている。かなり繁盛している様子だ。

 

どの学校でも資金集めは盛んだ。あるハイスクールでは、学期ごとに生徒理事会が企画する自由服登校日があり、その際、生徒は小銭(「ワンコイン」)を持参することになっている。集めた小銭は、学校コミュニティで役立てるという。資金集めは小学生の間でも盛んだ。

 

災害や慈善のための社会募金もあるが、自分たちのためのものも少なくない。学校の行事、個別に参加するキャンプやスタディーツアー、スポーツ大会やパフォーマンスの発表会などに必要な資金を集めるのだ。

 

校舎の改修や備品の購入などにも使われる。保護者も資金集めをよくするが、参加は自発的だ。寄付する側も使い道がはっきりしているので募金しやすい。