国策の「カーボンニュートラル事業」で「18億円の予算余り」…なのに予算額は「毎年拡大」するお粗末な理由【新聞記者が解説】

国策の「カーボンニュートラル事業」で「18億円の予算余り」…なのに予算額は「毎年拡大」するお粗末な理由【新聞記者が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年の日本の税収は過去最高額の68兆円超となりました。国が増税へと突き進むなか、税金はどのように使われているのでしょうか。毎日新聞社東京本社経済部記者の高橋祐貴氏が著書『追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く』(光文社)から、約3年にわたって粘り強く取材を続けてきた結果見えてきた、税金の無駄遣いの実態を解説します。本記事では脱炭素(カーボンニュートラル)施策の現状についてお伝えします。

「予算査定の公正さが失われている可能性」への指摘

水素ステーションの設置補助事業が始まったのは2013年だ。補助事業では、水素ステーションの初期投資時に最大3億9000万円(もしくは最大で事業費の3分の2)を、維持・管理費に年最大2,200万円をそれぞれ支給する。

 

だが、予算の執行状況を示す政府のレビューシートによると、支給額を計上された累計予算で割ることで算出される執行率は2015年度の89%をピークに83%(18年度)、68%(19年度)、53%(20年度)と下がっている。

 

 

毎年のように余る予算が増え、翌年度に繰り越した額は18億円(18年度)に達した。それでも22年度予算の編成作業では今年度当初予算と同じ規模で概算要求されていた。

 

多年度にわたる政策に必要な予算は、財務省の厳しい査定によって毎年の額を決めていくが、執行率が悪くなると次年度以降に減額されることが多い。実際、執行率が悪いEV向けの整備補助金は前年の6割程度に減額された年もある。

 

財政法上、国の予算は次の年度に繰り越さないのが原則だ。会計検査院も「その年度内に使用されるべきだ」と指摘する。

 

ある財務官僚は、この水素ステーション設置補助事業に対して「真面目に査定すれば、減額しなければいけない政策だ」と語った。

 

一方、補助事業を所管する経済産業省の担当者は「脱炭素市場の技術競争が正念場を迎える中、国際社会で『周回遅れ』につながりかねない」と話し、予算が減額になれば競争力を失いかねないと主張。

 

それでも、公共調達に詳しい上智大学の楠茂樹教授は、「執行計画が甘くないか検証が必要で、脱炭素化社会の実現に向けた目標が足かせとなって、予算査定の公正さが失われている可能性がある」と指摘する。

 

 

高橋 祐貴

毎日新聞社東京本社経済部

記者

 

追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く

追跡 税金のゆくえ~ブラックボックスを暴く

高橋 祐貴

光文社

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