300万円の奨学金を14~15年で返還…5人に1人が「かなり苦しい」
利用して利用していた奨学金の種類は、「有利子」が61.4%、「無利子」が49.4%、「給付」はわずか2.0%。給付型や無利子の奨学金を利用してもそれだけでは足りず、有利子の奨学金を利用しているケースもあり、合計すると100%を超えます。
借入総額は「100~200万円未満」が19.5%、「200~300万円未満」が25.8%、「300~400万円未満」が17.0%で、平均は310万円。毎月の返済額は「1万~1万5,000円未満」が34.2%と最も多く、平均は1万5,000円ほどで、返済期間は平均14.5年です。
月々1万5,000円の返還。この金額が利用者の肩に重くのしかかります。「返済に余裕がある」は9.6%と1割にとどまり、「何とかなっている」が45.9%、「苦しい」が44.5%。さらに「苦しい」のなかでも「かなり苦しい」が20.8%と、奨学金利用者の5人に1人という水準。
このような奨学金の負担が生活設計にどのような影響を与えているのか聞いたところ、「貯蓄」が6割、「結婚」が4割弱、「子育て・出産」、「持家取得」は3割強。さらに「日常的な食事」「レジャー・交際」が4割、「医療機関の受診」が3割と、ライフイベントはもちろんのこと、日常生活さえも圧迫していることがわかります。
大学新卒で手取り17万円のなか、いきなり借金を300万円を背負い、月々1万5,000円を返す生活が14年ほど続く……気づけば40代の手前。結婚適齢期を過ぎていますから、確かに奨学金の負担感低減は少子化対策になるというのも納得感があります。しかし「減額」というレベルでは抜本的な解決にならない、というのが、奨学金返還で苦しい思いをした人たち、また現在まさに苦労している人たちの声なのでしょう。
OECDの資料によると、日本の「大学教育費の公的負担比率」は32.63%で、調査対象37ヵ国中35位。世界の主要国のなかでも日本は「大学で学ぶために自己負担を強いられる国」だといえます。それに対して上位の国々は8~9割ですから、「まだまだ日本はお金を出せるはず」という意見が出てもおかしくありません。現に野党議員から「奨学金の減額など、どこが異次元ですか!」という声もあがっています。
【世界主要国「教育費の公的負担比率(大学生)」上位10ヵ国】
1位「ノルウェー」92.21%
2位「ルクセンブルク」91.02 %
3位「フィンランド」90.44%
4位「オーストリア」88.98%
5位「アイスランド」88.65%
6位「デンマーク」84.57%
7位「ベルギー」84.12%
8位「スロベニア」83.76%
9位「スウェーデン」83.40%
10位「ドイツ」81.18%
出所:OECD 資料:GLOBAL NOTE
しかし「異次元」と謳いながらも、言葉通りの政策を実施するほどのお金は日本にはなく、「奨学金の減額」が精一杯……それが現実。もし本当に「異次元の少子化対策」を実現するなら、いま以上の負担を全国民に強いることになりそうです。