「異次元の少子化対策」に不満の声、続出
文部科学省は、政府が「異次元の少子化対策」のたたき台で示し、2024年度から始める奨学金新制度について、その詳細を発表しました。新制度は「給付型奨学金と授業料減免を中間層に拡大」「授業料の後払い制度を新設」「貸与型奨学金の減額返還の柔軟化」の三本柱。利用可能な年収の目安などは既にたたき台に盛り込まれていましたが、今回は給付額などを示しています。
この発表を受け、期待の声はほとんどなく、不満の声が聞こえてきます。特に奨学金について「減額」といった文言に、期待外れという声が多いようです。
日本の奨学金は貸与型がほとんどで、給付型はほんのわずか。日本学生支援機構によると、給付型奨学金制度が創設された2017年以降の5年間の支給実績は2,900億円。貸与型奨学金の残高は9.5兆円といわれており、それと比べるとあまりの少なさです。
――奨学金の返済が苦しくて吐きそう、もうムリ
――奨学金の返済を抱えて、結婚とか考えられない
そんな若者たちの言葉がSNS上に溢れかえっているなか、“異次元”というほどでもない素案に失意のほうが大きいようです。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大学新卒者の平均給与(所定内給与額)は月22万8,500円で、手取りだと17万円ほどといったところ。実家暮らしなのかどうかなどで状況はずいぶんと変わりますが、1人暮らしだとすれば生活に余裕があるとは言い難い金額。そこに奨学金の返済が加わると相当厳しいことが想像できます。
実際に奨学金の返済とはどのようなものなのか、労働者福祉中央協議会が昨年9月に公表した『奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書』を確認していきましょう。
まず回答者は男性が34.4%、女性が64.8%で平均年齢は30.6歳。最終学歴は「私立大学卒」が43.2%で「専門学校卒」が18.5%、「国公立大学卒」が13.8%。既婚者が39.5%で、さらに子どもがいる人は25.3%。住まいは「持家」24.7%、「民間賃貸住宅」41.7%となっています。