「異次元の少子化対策」のアウトラインが段々とはっきりとしてきましたが、そんななか、働く親の強い味方である「保育士」は深いため息をついています。過酷な保育士の実情をみていきましょう。
平均月収31万円だが「もう限界です。」20人の3歳児を1人で担当する38歳・保育士「悲しすぎる給与額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

人手不足が深刻な「保育の現場」

――保育士、辞めたい

――もう精神的にも、体力的にも限界

 

中堅だという30代の保育士。「子どもたちは可愛いけど」「保育士という仕事が嫌いというわけではないけれど」などということわりの言葉と共に、悲痛なつぶやきがされています。

 

先日、政府は岸田文雄首相による「異次元の少子化対策」のたたき台を発表しました。そのなかで焦点となっていた「保育士の配置基準」は現行のまま、保育士1人が受け持てる1歳児を6人→5人、4~5歳児を30人→25人にできるよう、運営費増額の方針を示しています。

 

【保育士の配置基準】

0歳児:子ども3人に保育士1人

1・2歳児:子ども6人に保育士1人

3歳児:子ども20人に保育士1人

4・5歳児:子ども30人に保育士1人

 

このような方針となったのは、保育士不足が原因。配置基準を変えると、人員を確保できない保育所がでてくる可能性があるというのです。

 

――これでは現状と何ら変わらないではないか!

 

子育ての経験がある人であれば、20人の3歳児を、30人の4・5歳児を1人で保育しなければならない現状が、どれほど過酷なことかわかるでしょう。

 

保育士として働くには保育士資格を取得することが必要で、養成課程のある学校や施設を卒業する、または保育士試験に合格するという方法があります。養成課程の多くは大学や短大、専門学校の中に設けられ、通信教育や夜間教育を行っているところも。

 

保育士試験は年2回実施。短大・専門学校卒業者(大学に2年以上在籍、教養課程を修了した人を含む)や児童福祉施設で5年以上(高校卒業者は2年以上)児童の保護に従事した人などが受験できます。

 

そんな保育士ですが、資格を取得しながらも保育士として働かない人(潜在保育士)は5割にのぼるとか。また勤続年数が短いことも特徴で、また退職した保育士で再就職を希望しない人の約4割が勤続年数5年未満だとされています。

 

2021年度、保育士の有効求人倍率は2.87倍。平均値よりもだいぶ高く、仕事が見つかりやすい職業=人手不足だといえます。