コロナ禍からの回復で、日常を取り戻しつつある昨今。一方でコロナ救済がなくなり、今後増えるといわれているのが「家賃滞納」です。特に深刻なのが「高齢者」。家賃滞納の先に待つのは……みていきましょう。
東京23区・最低生活費12万円でも…「低年金」「預貯金なし」元会社員の独居老人「家賃さえ払えない」の絶望、悲劇的な末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍からの回復で「家賃滞納」増加か!?

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『日管協短観』によると、2021年度、「2ヵ月以上滞納率」は全国平均0.4%。首都圏で0.3%、関西で0.8%でした。コロナ禍前の2019年上期(2019年4~9月)は、全国平均が1.0%、首都圏は0.9%、関西は1.4%。コロナ禍では給付金などによる支援があり、家賃滞納率は減少傾向にありましたが、コロナ禍から本格的に脱却しようとしている今後は、物価高騰による生活苦などもあり、さらなる悪化の懸念が広がっています。

 

コロナ禍前の水準まで悪化するとなると「100軒に1軒は家賃滞納」という水準。これを多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところ。ただ日本の民間賃貸世帯数は1,300万世帯といわれていますから、その1%とすると13万世帯が「家賃が払えず撃沈」となり、結構な数だといえます。

 

実際にSNSをのぞくと、「家賃が払えない!」という悲鳴であふれています。

 

――やばい、家賃払えない、ケータイ代払えない

――一人暮らしの友人「家賃が払えず、カップ麺しか食ってない」

――家賃払えないので実家に帰るかも…

 

若者の多くは「実家に帰る」などの手段があり、「家賃が払えなくてもなんとかなるだろう」という声も。最も大変なのは、声をあげようにもなかなか届かない「高齢者」だとされています。

 

元会社員・公務員の半数は「年金だけでは暮らせない」という現実

高齢者の生活を支えるのは公的年金ですが、暮らしていくのに十分な年金を手にしている人はどれほどいるのでしょうか。たとえば東京都23区の最低生活費は12万5,600円。保険料などを引かれることを加味すると、14万円の年金があれば、東京都23区では生きていけるということになります。

 

厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者のうち年金14万円未満(国民年金+厚生年金)なのは48%。男女別でみていくと、男性ではおよそ3割の314万人、女性ではおよそ5割の463万人が14万円以下です。

 

元会社員・公務員の約半数が年金だけでは暮らしていけないという状況。さらに預貯金もないという人たちが2022年で2.6%*であることを当てはめると、元会社員・公務員だったおよそ20万人の高齢者が、取り崩す預貯金もないという状況だと考えられます。支えてくれる家族と暮らしているならいいのですが、誰も頼れず一人暮らし……という場合は本当に悲惨。暮らしていくのも絶望的です。

 

*金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)』より