「老後は年金だけで暮らしたい」と誰もが思うもの。しかし現実は厳しく、貯蓄を取り崩しながら生活するというのが一般的です。一方、「年金の増額を狙う」という方法も。しかし、そこには思わぬ落とし穴も。みていきましょう。
70歳女性「時給1,283円」で工場勤務、賃金25%アップに心惹かれて…低年金の高齢者「深夜バイト」の異常 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ単身高齢女性が「生活困窮」に陥るのか?

しかしなぜ高齢の単身女性は貧困に陥りやすいのでしょうか。そこにあるのは、やはり年金。日本の年金は「2階建て」構造で、日本国民であれば誰もが入らなければならない国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金があり、厚生年金受給者は国民年金に厚生年金が上乗せされた年金を手にします。国民年金の受給額は、満額支給であれば月6.4万円ほど。厚生年金の受給額は、厚生労働省の調査によると平均14万円ほどです。

 

現在の高齢者は、夫婦共働きはまだまだ珍しい時代。専業主婦というケースが多いでしょう。夫が会社員や公務員だった場合、夫が亡くなったとしても遺族厚生年金があり、生活が困窮するという話はあまり聞くことはありません。しかし夫が自営業等の場合、遺族基礎年金は子どもの要件があり、それを満たせば遺族基礎年金を手にできます。しかし65歳以上であれば、要件を満たす子どもはいないケースがほとんど。また遺族基礎年金と老齢年金は併給することができず、どちらかを選択しなければなりません。

 

またパートナーのいない場合でも、女性の正社員が珍しかった時代、非正規で働いてきたというケースも多いでしょう。非正規の厚生年金への加入が緩和されたのは最近の話。そもそも基礎年金しか手にできないという人も多いのです。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、女性の国民年金受給者の1,800万人のうち、年金受給額月5万円に満たない人はは3割超え。また女性の厚生年金受給者500万人のうち、年金受給額(国民年金含む)10万円に満たない人が2割強います。このなかには、相当数の単身者がいることでしょう。そんな低年金で暮らしていくのは到底無理な話。70歳を超えても、深夜であっても、働かないと生きていくことさえできないのです。

 

――深夜に高齢者が働く異常な国

 

そう称される日本は、世界の国々がいずれみる光景かもしれません。高齢でも働くこと、深夜でも働くこと、そのこと自体は是正する必要はないでしょう。しかし「せざるを得ない」という状況は、解決しなければならないことではないでしょうか。