「老後は年金だけで暮らしたい」と誰もが思うもの。しかし現実は厳しく、貯蓄を取り崩しながら生活するというのが一般的です。一方、「年金の増額を狙う」という方法も。しかし、そこには思わぬ落とし穴も。みていきましょう。
70歳女性「時給1,283円」で工場勤務、賃金25%アップに心惹かれて…低年金の高齢者「深夜バイト」の異常 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ70歳を超える高齢女性は工場で深夜バイトをしていたのか?

――70歳を超える女性が深夜12時に工場でアルバイトなんて

 

SNSの投稿主は高齢者が深夜アルバイトをしなければならない日本の実情に驚きを隠せない様子。工場火災を受けてのつぶやきに、同じようにショックを覚えた人もいたでしょう。

 

大手求人サイトによると、工場勤務のアルバイトの平均時給は1,283円。労働基準法第37条では、深夜時間である22時から5時の間に勤務した場合は「深夜手当」として25%以上の割増率で計算する必要があるとしています。

 

仮に前出の女性が深夜帯の7時間、同年代の平均的な勤務日数分、アルバイトしていたとしたら、月々16.8万円の月収。手取りにすると13万~14万円程度でしょうか。深夜帯でなければ手取りは10万~11万円程度と3万円程度の差が生じます。

 

たった3万円。しかし収入を得る手段が限られる高齢者にとっては、されど3万円。日中に働いたほうが楽かもしれませんが、少しでも収入を得られる深夜帯をわざわざ希望して働いていたかもしれません。

 

同じようにSNSのつぶやきで、日本に住む外国人は母国ではありえない日本の日常風景として、働いている高齢者が多いことを挙げていました。しかも深夜に働くなど異常だと。確かに、世界のなかでも高齢化が進む日本。お金のためというよりも、健康のため、生きがいのために働いている、という高齢者も大勢います。高齢化が日本ほど進んでいない国では、高齢者が働く姿は珍しいかもしれませんが、日本が先取りしているだけかもしれません。それでも深夜に働かなくてはいけない、というのは、少々寂しい限りです。

 

深夜に働かなければいけない……そこにはやはり老後生活費の不足があり、高齢者の生活困窮者の多くは単身者、そして男性よりも女性のほうが多くなっています。

 

2020年『国勢調査』によると日本の世帯数は5583万世帯で、そのうち単身世帯は全体の38.0%を占めます。65歳以上の単身世帯は拡大が続き、高齢者5人に1人はひとり暮らし。男女別では男性は230万8,171人、女性は440万8,635人と圧倒的に女性が多くなっています。これは女性のほうが男性よりも平均寿命が長いということも大いに関係しているでしょう。