収入が高く、資産が潤沢……社会的強者である勝ち組会社員であっても、不確実性の時代であるいま、老後の不安は大きいようです。FP1級の川淵ゆかり氏が大手医薬品会社の営業部長Aさんの事例とともに、会社員の老後計画について解説します。
手取り55万円・資産3,000万円の45歳大企業部長、圧倒的「勝ち組」のはずが…預金も吹っ飛ぶ「老後の不足額」に悲鳴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさん60歳時点…驚愕の住宅ローン残高

Aさんの1番の悩みは住宅ローンです。40歳のときに35年ローン(変動金利型)で借りた7,000万円の住宅ローンの完済時期は75歳です。毎月の返済額は現在のところ約18万円ですが、変動金利型ということもあってこれも将来の心配の種となっています。

 

当初は「繰り上げ返済」の実行で早めに完済すればいい、と簡単に考えていたAさんでしたが、年々大きくなる教育費や生活費のため、なかなか実行できないばかりか、資産も増えにくくなっています。Aさん自身は、60歳になったら住宅ローンを手持ちの資金で完済してしまい、そのあとは残りの資産と退職金や公的年金をもとに老後の生活を送りたい、との考えで筆者に試算を依頼されました。

 

Aさんの住宅ローンは変動金利型でしたが、将来の金利動向は不明ですので、とりあえず現在の金利状況が続くものとして算出しました。Aさんが60歳というと借り入れから20年後となり、ローン残高は約3,100万円となります。

 

「え~!預金、吹っ飛ぶねぇ。参ったねぇ……」(Aさん夫婦の悲鳴)

 

家族4人での幸せを夢見て思い切って購入した住まいですが、老後に大きな負担を残すとともに、一人暮らしを望む子どもたちでは家族4人での生活期間はわずか数年です。住まいを購入する場合は、将来のことを考えて慎重にならないといけません。

 

さらに若い頃から高収入の方たちは、住宅ローンを抱えても生活レベルを落としたり、節約したり、といったことがなかなかできない傾向にあり、こういったことも家計に影響を与えてしまいます。

上限がある公的年金は意外と少額…40代から早めの老後計画を

Aさん夫婦には老後の夢があって、「年に1度は2人で海外旅行に行きたいね」「70代になったら高級老人ホームに入ろうか」などと雑談程度ですが話し合っていたそうです。

 

はたして、Aさん夫婦に理想の老後の生活は手に入るのでしょうか? 

 

生命文化センターの2022年「生活保障に関する調査」によると、最低日常生活費は月額で平均23.2万円、ゆとりある老後生活費は平均37.9万円となっています。また、海外旅行や高級老人ホームの入居費用などは一時的に大きな出費が必要です。

 

Aさんはまだ40代ですから、将来の退職金や年金額については、今後の社会情勢や経済動向などが影響してくるため、当然正確な金額は提供できません。ですが、大企業勤務ということで、退職金は2,200万円とし、公的年金については今後の収入の変動が不明ですが、現在の年収から月額約19.5万円(老齢基礎年金+老齢厚生年金)と算出し、妻の受給月額約6.5万円(老齢基礎年金のみ)と合わせて約26万円と算出しました。

 

これらをもとに老後の生活資金のキャッシュフローを作成したところ、70代のうちに資産が枯渇してしまうことがわかりました。しかも、現在のようなインフレが老後を襲うとさらに厳しい状況となります。

 

「預金も退職金も十分あると思っていたのに……」(Aさん夫婦の落胆)

 

老後には、他にもリフォーム、車や電化製品の購入といった一時的な出費は大きな負担となりますので、しっかりとした計画が必要となります。現在、Aさんは転居も含め、お子さんの希望を尊重しながらの生活の見直しを検討中です。

 

公的年金には上限もありますので、年収が他人の2倍だからといっても年金額は2倍になりません。ですから、年収が高い人ほど生活レベルを下げられず、老後破産に陥りやすくなるケースが増えています。

 

なお、年金額の計算の基礎となる平均標準報酬月額とは、「被保険者であった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者であった期間の月数」で割った額となりますので、現在同じ年収の人でも過去の収入から年金額には大きな差が生じる場合があります。ご自身の詳しい年金額をお知りになりたい方は、年金事務所や年金センターでのご相談をお勧めします。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表