収入が高く、資産が潤沢……社会的強者である勝ち組会社員であっても、不確実性の時代であるいま、老後の不安は大きいようです。FP1級の川淵ゆかり氏が大手医薬品会社の営業部長Aさんの事例とともに、会社員の老後計画について解説します。
手取り55万円・資産3,000万円の45歳大企業部長、圧倒的「勝ち組」のはずが…預金も吹っ飛ぶ「老後の不足額」に悲鳴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

大手医薬品会社の営業部長のAさん、高収入・高級マンション暮らしの勝ち組だったが…

Aさんは大手医薬品会社の45歳の営業部長で、43歳の専業主婦の妻と18歳と15歳の息子2人と都内の高級マンションに住んでいます。長男は今年の春から都内の有名私立大学に進学が決まっており、自宅マンションから通えないこともないのですが、本人は一人暮らしを希望しています。次男も長男と同じように3年後には私立大学に進学希望で一人暮らしになる予定です。

 

Aさん自身も優秀な方で、若いころから高収入でしたので、40歳のときに家族の幸せを思い7,000万円の住宅ローンを利用して都心に新築マンションを購入しました。マンションを購入する際には頭金等の支払いもしましたが、現在までに約3,000万円の資産が残っています。

 

いわゆる「勝ち組」であるAさんですが、45歳という年齢になったことと、子ども達の教育費が大きくなってきたこともあり、長男の大学進学を機に老後の相談に来られました。

 

45歳Aさん、将来への不安と悩み

ここ数年の新型コロナの影響はAさんの業界や仕事にも大きく響きました。2020年4月に日本製薬団体連合会(日薬連)が医療機関への訪問を自粛するよう呼びかけたため、従来の訪問営業は難しくなり、Aさんが管理する営業部では、業績が伸び悩んでしまいました。当然、ボーナスにも影響します。しかも昨年からの相次ぐ値上げも不安の種です。

 

「このまま値上げが続くと、大学の授業料や子どもの一人暮らしの家賃や生活費も上がっていくのではないだろうか?」

 

次男の大学卒業までにはまだ7年もありますし、育ち盛りで食費もかかりますから夫婦そろって頭を痛めています。Aさんは高収入ですが、

 

「40歳を過ぎたころから給料が増えない感じがします。社会保険料の負担も増えているのでしょうか? 給料は上がっていると思うのですが、手取りはそれほど増えている感じもなく、塾代など教育費も大きいため、預金もなかなか増えない状況になっています」

 

勤務先に対しても不安はあります。医薬品の研究開発には多くの時間や費用がかかりますし、医薬品業界は市場も大きく安定的に見えるかもしれませんが、競争の激しい業界です。今後、海外の企業のように吸収合併などがあると、会社は大きくなったとしても自分の地位や収入はどうなるかわかりませんし、役職定年となって部長職を解かれることも考えられます。

 

「40歳のころはなんの不安もなかったのですが、40代半ばになってくるといろいろと不安や悩みが出てきました」