4人家族のA一家。妻のBさんは看護師として働いていましたが、介護をしていた母親の認知症が悪化し、離職を決断します。しかし、共働き夫婦のうちの1人分の収入を失うことは、予想をはるかに上回る家計への影響があり……。FP1級の川淵ゆかり氏がA一家の事例をもとに、介護離職の危険性と老後を見据えたライフプランについて解説します。
世帯年収1,080万円の共働き夫婦だったが…48歳妻「母の認知症悪化」で介護離職を決断も、老後の「年金支給額」に絶望【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護とコロナで心身疲弊…看護師のBさんが下した「決断」

Aさん一家は、52歳のAさんと48歳の妻Bさん、そしてスポーツ好きな16歳と13歳の息子の4人家族です。Aさんは市内の病院に勤める理学療法士で年収は約550万円、別の病院に看護師として働くBさんの年収は約530万円です。15年前に購入した持ち家に4人で幸せに暮らしていましたが、数年前にBさんの母親が認知症を発症し始めたころから、その生活がだんだんと変化していきました。

 

Bさんの父親はすでに亡くなっており、母親は実家に1人暮らしをしていましたが、認知症発症をきっかけにBさんが家族の了解を得て自宅に呼び寄せ、同居することにしました。母親は、最初のうち症状は軽度でしたが、徐々に物忘れや判断能力の低下が進んでいきます。Bさんは看護師の激務をこなしながら、なんとか母親の面倒を見てきました。

 

そんななか、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めました。

 

Bさん自身はコロナ病棟の担当ではありませんでしたが、周りの医療スタッフの感染も増え、その職員らが欠勤することで人手不足になり、勤務する病棟もいままで以上に忙殺される日々が続きました。ただでさえ忙しい仕事にもかかわらず、母親の症状の悪化、新型コロナの流行によって負担は増えるばかり……Bさんは心身ともに疲弊していきます。

 

限界を感じたBさんは、新型コロナが一時的に収束したタイミングを見計らって、退職を決断しました。

激務から解放されたBさんを襲った「お金の不安」

退職してしばらくは激務から解放され、体調も戻ってきたBさんでしたが、やがて「お金の不安」が襲ってきました。

 

まずは、「住宅ローン」です。15年前に購入した自宅は、住宅ローンがあと20年も残っており、ご主人が72歳になるまで返済は続く予定です。また、高校生と中学生の息子2人の「教育費」についても、大学進学を見据えまだまだお金がかかります。

 

さらに、このごろは毎日のようにテレビから流れてくる「食料品値上げ」のニュースが頭を悩ませます。育ち盛りの息子たちはスポーツをやっているため食欲も旺盛ですし、Bさんは母親として「食べたいだけ食べさせてあげたい」と思っていますから、我慢はさせたくありません。

 

さらに追い打ちをかけたのが、電気代をはじめとする「光熱費の値上げ」です。この冬は特に寒さが厳しく、昨年に比べて費用が約5割もアップしていました。にもかかわらず、ニュースでは「春に再び電気代の値上げが行われる」と報じています。

 

「預貯金は十分にある」と思っていたBさんでしたが、夫も50歳を過ぎたいま、将来の生活に不安を感じ、Bさんは夫を連れて筆者のFP事務所に相談に来られました。