急に腰が痛い…これは「ぎっくり腰」?「ヘルニア」?
腰痛には慢性的なものや急性的なもの、あるいは突然発症するものや、緩やかに発症するものなどさまざまあります。そのなかで普段、私たちが遭遇する可能性が高いのが「ぎっくり腰」と「腰椎椎間板ヘルニア」。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
「ぎっくり腰」になりやすい人の特徴
「ぎっくり腰」は正式な病名ではなく、正式には「筋膜腰痛症」といいます。これは、「急性腰痛症」のひとつです。重いものを持ち上げた瞬間や立ち上がろうとしたときなど、些細な動作で引き起こされることが多く、発症すると強烈な痛みのために立ち上がることすら困難になります。
ぎっくり腰は、筋肉や筋膜が急激に引き伸ばされたことで発症することが多く、これは「筋肉や筋膜に炎症が起こっている状態」です。
また、慢性的な筋肉疲労や、長時間同じ姿勢を維持したことによる骨格のゆがみなどが原因となって発症することもあります。ぎっくり腰は一般に次のような人に発症しやすいと考えられています。
・体が硬い人
・普段から運動不足の人
・同じ姿勢で長時間作業している人
非常に強烈な痛みを伴うのが特徴で、別名“魔女の一撃”ともいわれます。多くの場合、発症直後は動くことも立ち上がることもできません。痛みが治まるのは、発症から2〜3日後。
以前は、ぎっくり腰を起こしたらしばらく安静に過ごすべきとされていましたが、近年の研究により、長期間体を動かさないでいると全身の筋肉が衰え、かえって回復が遅くなることがわかりました。そのため、痛みが落ち着いてきたら、可能な範囲で体を動かすほうがいいでしょう。
悪い姿勢での動作や喫煙などもヘルニアの原因
同じく、急性の腰痛を引き起こす疾患に「腰椎椎間板ヘルニア」があります。これは、骨と骨のあいだの“クッション”の役割を果たしている椎間板が飛び出し、神経を圧迫してしまうことで起こります。
原因は、加齢などによる椎間板の変性です。そのほか、悪い姿勢で長時間作業をしたり、重いものを頻繁に持ったり、日々の生活のなかで腰に対する負担が蓄積することでも発症します。また、喫煙の習慣や遺伝的な要因も腰椎椎間板ヘルニアの発症と関連が指摘されています。
ヘルニアが神経を圧迫すれば、下肢にしびれや麻痺などの神経症状が出ますが、神経根に触れなければ神経症状が出ず、腰痛だけが生じることもあります。特に痛みが生じるのは前屈みになったときで、おじぎをしたり、椅子に座ったりしたときなどに痛みを感じやすくなります。
「ぎっくり腰だと思ったらヘルニアだった」というケースも
どちらも急性の腰痛が特徴的な症状であるため、「ぎっくり腰だと思ったら、実は、腰椎椎間板ヘルニアだった」という症例も少なくありません。
このとき注意したいのは、「ぎっくり腰と腰椎椎間板ヘルニアでは対処法が違う」という点です。
まず、ぎっくり腰の場合は、必要に応じてコルセットを装着したり、消炎鎮痛剤・湿布などの外用剤を用いたり、リハビリ加療を行ったりします。
また、症状によっては椎間関節内へのブロック注射を行う場合もあります。たいていの場合、ほとんどが数日間で軽快するため、それほど心配はいりません。
一方、腰椎椎間板ヘルニアの場合も、急性の痛みが生じている間は安静にすることが大切で、症状に応じて消炎鎮痛剤、筋弛緩剤などの薬剤や、筋肉注射、硬膜外ブロック、神経根ブロックなどの注射、リハビリ加療を行います。
しかし、腰椎椎間板ヘルニアはそれでも症状がひかず、日常生活に支障が出たり、神経麻痺が出現し始めることがあります。その場合、症状によっては手術が必要になることもあるので注意が必要です。
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