ご褒美があってもいいだろう…購入前に立てた計画を「無視」したAさん
購入から5年が経ったころ、長男も無事に就職。「親として最低限の責任は果たせた」と、妻とこれまでの苦労をねぎらいあった。そして、これまで子どもたちにかかっていた時間やお金が自由になったことや子育てが終わった解放感も手伝って、夫婦で小旅行や外食などに出かけることが多くなった。また、妻も友人とのランチに出かけることが増えた。
そんな生活を続けていたある日、Aさんはふと、住宅購入前に妻と話し合っていたことを思い出した。「子どもが独立したら生活費は削減し、それを住宅ローンの繰り上げ返済資金として貯めていこう」と言っていたのだ。
しかし、「これまで我慢してきたのだからご褒美があってもいいだろう」とAさんは考え、とりあえずしばらくはこのままの生活を続けることに。結果、A夫妻は一度慣れ親しんだ生活水準から脱却することができず、生活費をまったく削減できないまま定年まで生活したのだった。
計画と現実
購入前に夫婦で立てた計画では、子供の独立後は毎月の支出を3万円削減し、3万円×12ヵ月×10年=360万円の繰り上げ返済資金を貯めることになっていた。
A夫妻が住宅購入時に立てていた計画は以下の通り。
・65歳時点でのローン残高……約1,839万円
・繰り上げ返済額……退職金1,200万円+360万円=1,560万円
・繰り上げ返済後のローン残高……約264万円
計画通りの場合、返済期間短縮であれば返済期間は残り1年6ヵ月、返済額変更であれば毎月2万3,482円の返済額となるはずだった。
しかし、Aさんは毎月3万円の返済資金を貯め損ねたため、退職金1,200万円のみを繰り上げ返済に充てることになり、その場合は以下の通りになる。
この場合、返済期間短縮であれば返済期間は残り3年4ヵ月、返済額変更であれば毎月5万5,549円の返済額となる。
期間短縮、返済額変更……。いずれの場合にも、当然ながら老後の負担は増すこととなる。そうなれば、老後資金計画の見直しを迫られることは免れない。