住宅ローンを借りるときに加入する「団体信用生命保険」は、債務者が死亡すると銀行が保険会社から死亡保険金を受け取り、住宅ローンを完済するという仕組みです。最近では死亡時だけではなく、がんをはじめとする三大疾病時にまで補償を拡大させた商品も増えていますが、そこには知らない人も多いデメリットがあるといいます。本記事では、心不全を発症した42歳の営業マンの事例とともに、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が「三大疾病保障付団体信用生命保険」について解説します。
年収900万円・42歳営業マン、心不全を発症も…ローン免除されない「三大疾病保障付」団体信用生命保険の“真相”に悲鳴【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

どのようにリスク対策をするべきか

ではBさんはどのようにリスク対策をすべきだったのでしょうか。まず、三大疾病保障付団体信用生命保険を加入していることは間違いではありません。しかし急性心筋梗塞を含めた心疾患の状態でも一定額の保障が受けられるように、民間の生命保険に加入すべきでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

Bさんのような心不全の状態で住宅ローンの残債が清算できるほどの保障額に加入すると、掛け金が膨大になります。その場合は、病気の急性期から1~2年間の住宅ローンの返済分相当の保障額(300万円程度)に留めておいてもいいと思います。その後やむなく長期の休職や失業したときに備えて、休業保険や就業不能保険などの加入も考えてみてもいいでしょう。自営業の方や歩合給の割合が大きな職種の方は特に必要です。

 

三大疾病保障付団体信用生命保険の保障部分を民間の生命保険でカバーすることも要検討です。三大疾病に対する保障を住宅ローンと紐づけないため、健康状態に不安があっても住宅ローンの借換えがしやすくなります。ただしこの場合は、三大疾病保障付団体信用生命保険よりも掛け金の負担が大きくなるデメリットがあります。団体信用生命保険でカバーされない病気やケガの状態は実は大きく、いざというときに適用外になるリスクが大きいのが現状です。

 

団体信用生命保険の契約概要をよく読んで理解してから加入するのが本来ですが、銀行や住宅メーカーでは「適用外」についての詳しい説明を受けることはごく稀でしょう。Bさんのように誤解をしたまま加入していることも多いと思います。

 

住宅ローンが返済困難になる状態は実に様々なケースがあり、そこを熟知した住宅メーカーやファイナンシャルプランナー事務所にて各種保険の設計をしてもらうことをおすすめします。保険営業マンや保険ショップからいわれるがままに加入しているだけでは、住宅ローン返済におけるリスク対策としては不十分であることはいうまでもありません。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表