住宅購入を検討する人が多い30~40代。憧れのマイホーム購入時には夢が膨らむものですが、「まだ先のこと」と老後のことまでイメージできずに購入を決断してしまうことも。本記事では、世帯年収1,000万円の30代夫婦の事例とともに、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が住宅購入時に考えておくべきことについて解説します。
年収1,000万円の30代共働き夫婦「狭小住宅購入」で待ち受ける“悲惨な老後”【FPの助言】 (※画像はイメージです/PIXTA)

住宅購入の夢と現実

住宅を購入しようと考えるのは、主に30~40代が最も多く、なかでも夫婦で住宅購入を検討する際には、結婚からさほど年月は経っていなく、子供もまだ小さいというケースが多いでしょう。この若い世代は、マイホームにどんな夢を描くでしょうか。広くて日当たりのいいリビング、快適な寝室、使い勝手のいいキッチンやクローゼット、子供全員分の子供部屋……素敵な夢を膨らませるものです。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

しかし、自分たちが後期高齢者となったときのことをリアルに想像して家づくりを考える人はどれだけいるでしょうか。住宅購入時には、「いま感じている不安はなにか?」を明確にしておく必要があります。さまざまな不安を抱えていても、「老後の生活」と答える人は皆無です。もちろん、若い世代の夫婦が老後のことを考えるほうが不自然かもしれません。しかし住宅購入時、老後のことを無視したり軽視したりすると、最悪の場合、老いてから家計破綻を起こしかねません。

 

それは単に住宅ローンを払い切れるかというだけの問題ではありません。いま買おうとしている住宅は、自分の寿命が尽きるまで無事に存在するものでしょうか。健康でなくなり足腰が弱ってからもその家に住み続けることができるのでしょうか。現実が想像と異なったとき、老後生活は悲惨なものとなってしまいます。事例を交えながら、若い世代が住宅購入を検討する様子をみていきます。

世帯年収で1,000万円・貯蓄ゼロの夫婦、「建売の狭小住宅」の購入を検討

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

夫Aさん 31歳 会社員 年収510万円

妻Bさん 30歳 会社員 年収490万円

子供 3歳

戸建ての住宅を検討。貯蓄が少なくローンを返済していけるか不安がある。なるべく安い予算で購入したい。

 

Aさん夫婦は世帯年収で1,000万円と潤沢な収入がありながら、貯蓄がほぼゼロという状況でした。家計簿をつける習慣はなく、いままでお互いの年収もよく知りませんでした。ネットで衝動的に物を買う習慣があり、あまりお金の管理は得意ではないという2人。そんな自分たちが家を買ってもいいのか、安全な予算はいくらなのかという不安から相談を依頼されました。

 

年収からすると6,000万円程度の融資も受けられそうですが、Aさん夫婦が自分たちで「上限」だと決めた予算は土地込み4,000万円。希望する地区では成り立たない予算です。

 

妻のBさんが候補のひとつと考えたのは、建売の狭小住宅でした。土地は40坪、2階建てで延床面積は24坪です。傾斜地に建てているので一階部分の玄関まで階段で登る必要があります。地価の相場、外構工事費用から考えると、建物の価格は1,300万円強と想像できます。周辺は入り組んだ狭い路地で、小高い丘に家が密集しています。

 

「坂の上で見晴らしがいいですよ。寝室の窓から街の夜景が見えるのが気に入っています」とBさんがいいます。確かに世帯年収1,000万円の夫婦にとっては、4,000万円の住宅ローンは非常に安全にみえるでしょう。寝室からの眺めのよさも魅力的です。

 

しかし、もしこの物件に決めたとすると、のちのち大きな問題点がいくつも浮かび上がってきてしまうのです。どのような問題点でしょうか……?