株式は取引価格が日々変動し、また、時折世界が大騒ぎするような値動きを見せることから、投資初心者のなかにはギャンブルや宝くじのような「一攫千金」のイメージを抱いている人も少なくありません。しかし、投資とギャンブル等には決定的な違いがあると、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏はいいます。それはどのような違いか、そして、なぜギャンブルや宝くじではなく、株式投資のほうが儲かるといえるのか、みていきましょう。
「知識がなくても」競馬や宝くじより「株式のほうが儲かる」といえる“理論的な”理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

株式投資で大きな利益は狙えない

どんなに優秀な投資家でも、平均すれば1年間に数十%の利益しか上げられないのが、株式投資です。

 

まれに、たとえば100%(2倍)以上など、それ以上の利益が出るケースもありますが、長続きはしません。5年、10年、20年と、期間が長くなればなるほど大きな利益を出すのが難しくなっていきます。

 

なぜかといえば、それが「投資」だからです。

 

上場企業の成長に賭けるのが「株式投資」ですが、何年も利益が倍々になっていくような企業などありません。ライバルが現れたり、顧客の数が頭打ちになったりして、成長速度には陰りが出てくるものです。

 

また、市場全体を考えればなおさら、毎年少しずつ成長していくのが基本的な経済の姿だといえます。

 

「インデックス投資」のように、市場全体に資金を投じる方法で得られる利益は、平均すると年に「金利プラス5~6%」といわれています。金利が0に等しい日本では、インデックス投資によって年に5~6%ぐらい利益が出るのが平均的なのです。

 

もちろんなかには、上手に個別株投資をすることで、年に数十%の利益を手にする投資家もいるでしょう。しかし長い期間で平均すれば、その数十%が限界であり、長年倍々で資産を増やしている投資家など存在しません。そして市場平均では、前述通り数%という利益が普通です。

 

株式投資というのは現実の経済にリンクするものですから、一攫千金を狙うのではなく、「そういうもの」だと思っていたほうがよいのです。

「投資」より「ギャンブル」のほうが儲かるの?

では、ギャンブルのほうが儲かるのでしょうか?

 

たとえば、競馬で勝てば、一気に資金が何倍や何十倍になることがあります。宝くじでは、1枚300円が億単位のお金になることもあります。しかし、これはあくまで「うまくいったら」の話でしかありません。

 

数学の確率分野に、「期待値」という概念があります。期待値は、「得られるリターン×それが得られる確率」で計算できます。

 

期待値が1(100%)ならば、平均して、賭けた金額に対して賭けた分がそのまま戻ってくるということです。

 

期待値が0.5(50%)ならば、平均して、賭けた金額に対してその半分が戻ってくることになります。

 

ギャンブルというのは基本的に、参加者全員が賭けた金額の総額から、胴元が経費や自分の儲けを抜き、その残りを参加者全員に配分する仕組みになっています。したがって、期待値は、必然的に1を下回ります。

 

ですから、長く続ければ続けるほど、損をしていくのがギャンブルです。

 

たとえば宝くじは、参加者全員が投じた金額の総額から、およそ半分を運営側が抜き、残りの半分を参加者全員に分配する仕組みになっています。つまり、期待値はおよそ「0.5」です。参加者のなかには得をする人もいますが、それはまれなケースであり、億単位のお金を手にする人などごくわずかです。本当に儲かっているのは、運営側です。

 

一方、株式投資では、市場平均に賭けることでも年に平均5~6%の利益を得られるのですから、期待値になおすと「1.05~1.06」の賭けということになります。

 

したがって、ギャンブルほど大きく儲からないように見えますが、実は平均すればはるかに大きく儲かるのが、株式投資なのです。