ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が大学卒女性の生涯賃金に注目して推計。働き方によって、どのような違いがあるかみていきましょう。
大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計…正社員で2人出産・育休・時短で2億円超、男性並水準で3億円超 (写真はイメージです/PIXTA)

1―はじめに…「女性の活躍推進」が言われ始めて約10年、期待される女性の経済力

政府が2013年に成長戦略として「女性の活躍」を掲げてから*1、10年近くが経過した。2015年8月には「女性の活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」が成立し(2016年4月施行)、国や地方公共団体、民間企業*2等に対して、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定や情報の公表が義務付けられるようになった。

 

その結果、女性の管理職等の比率(図表1)や男女の賃金格差(図表2)、男性の育児休業取得率(図表3)など、女性の職業生活に関わる各種指標において一層の改善が進んでいる。また、30代を中心とした既婚女性の労働力率が上昇することで、当初から課題としてあげられていた「М字カーブ問題(出産や子育てによる離職)」は解消に近づいている(図表4)

 

【図表1】【図表2】
【図表1】【図表2】
【図表3】【図表4】
【図表3】【図表4】

 

 

現在のところ、未だ多くの領域に是正の求められる男女差が存在し、課題は残存しているものの、今後とも「女性の活躍」推進が期待される中で、女性の経済力が日本経済に与える影響は一層、増していく。

 

このような中、本稿では大学卒業後の女性*3について、雇用形態や育児休業制度・時間短縮勤務制度の利用状況などの違いを考慮しながら、生涯賃金を推計する*4

 

*1:首相官邸「日本再興戦略-JAPAN is BACK(平成25年6月14日)」

*2:当初は常用労働者301人以上の企業等が対象で、2022年4月1日以降は101人以上の企業等に対象が拡大。

*3:文部科学省「学校基本調査」によると、女性の大学進学率は上昇傾向が続いており、2022年で53.4%、男性は59.7%。

*4:久我尚子「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」(ニッセイ基礎研レポート、2016/11/16)にて同様の推計をしているが、本稿では統計の最新値(2021年)を用いるとともに、65歳で退職したケースや大企業勤務(企業規模1,000人以上)のケース、男性と同様の賃金水準を得ているケースなどを加えている。