3月15日に迫った確定申告期限。手続きの煩雑さから、つい後回しにしているという人も少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、初めての確定申告で苦い経験をしたT氏の事例をもとに、確定申告で陥りがちな「3つの苦戦ポイント」を解説します。
年収980万円の35歳・エリート会社員「初めての確定申告」終えてひと安心も…数週間後「税務署から質問攻め」にあったワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年収982万円会社員、節税効果を求め「不動産投資」をスタート

T氏は大手企業に勤める名古屋在住の会社員だ。結婚して子供が1人いる。子供ができたことでお金がかかるようになり、少しでも節約できることはないかと調べていた。

 

【T氏の状況】

・年収……982万円
・所得税……68万円
・住民税……55万円

 

年収が982万円ともなると、年間を通して納める額は所得税と住民税で合計123万円にのぼり、その金額の大きさに驚く。T氏はどうにかしたいと思っていたものの、給料から天引きされるため半ば諦めていた。

 

周りも同じように税金を納めていると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。会社の同僚によると、「不動産投資は節税効果があり、毎年税金の還付を受けている」というのだ。そこでT氏は早速、弊社の不動産投資セミナーに参加して不動産投資の仕組みを学び、自身も不動産を購入した。

 

【T氏が購入した物件概要】

・東京23区内/最寄り駅徒歩10分
・新築1Rマンション/27.5m2
・価格……3,470万円
・頭金……10万円
・諸費用……80万円
・銀行融資……3,460万円/金利1.6%/35年ローン

 

不動産投資における節税効果は物件の種類や購入方法により変わってくるが、一般的に節税効果に大きく影響する経費として、「減価償却費」と「借入利息」が挙げられる。

 

T氏の場合は、初期費用は抑えて始めたいという希望から、フルローンで融資が受けやすい都内の新築ワンルームマンションを選択した。ローン金額は大きいが、その分の借入利息が節税効果につながる。また、最寄り駅から徒歩10分と少し離れた場所の物件にすることで、物件価格の土地と建物の割合において建物価格が高くなり、減価償却費が大きく取れる点で節税できる。

 

さらに新築にしたことで、減価償却費は躯体(47年償却)と設備(15年償却)に分けることができ、前半の15年間の節税効果が大きくできる。

 

・物件価格……3,470万円
・土地建物割合……土地1,410万円、建物2,060万円
・建物価格内訳……躯体1,483万円(47年償却)、設備577万円(15年償却)

 

注意したいのは、仮に同条件の不動産を購入しても、所得が高くなるにつれて節税効果が大きくなるという点だ。そのため、自身の所得金額を考慮したうえで節税効果を重視する物件にするかどうか決断するべきである。

 

不動産を購入したことで、T氏は「確定申告」を行う必要が出てきた。

 

会社員のT氏は確定申告をしたことがなく、税理士に依頼することも考えたが、同僚は「国税庁ホームページのなかに無料で確定申告書を作成できるページがあるから、そこで簡単に作れる」と言う。たしかに、少なくない税理士費用を考えると、簡単に作れるならチャレンジするのもいいかもしれない。

 

こうして「初めての確定申告」を行うことになったT氏。しかし予想以上に、確定申告は苦難の連続だった。