3月15日に迫った確定申告期限。手続きの煩雑さから、つい後回しにしているという人も少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、初めての確定申告で苦い経験をしたT氏の事例をもとに、確定申告で陥りがちな「3つの苦戦ポイント」を解説します。
年収980万円の35歳・エリート会社員「初めての確定申告」終えてひと安心も…数週間後「税務署から質問攻め」にあったワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

数週間後、突如届いた税務署からの「お尋ね状」

3.税務署からの「お尋ね」

T氏は無事に確定申告が終わり「これで一安心」と思っていたところ、数週間後に税務署から1通の封筒が届いた。まさかの、税務署からの「お尋ね状」である。驚いたT氏は急いで内容を確認すると、「確定申告の資料を持って税務署にお越しください」とあった。

 

実は確定申告書を提出した際、少し疑問に感じていたことがあったT氏。記載した項目や数字になにか間違いがあったのだろうか。

 

税務署に行って話を聞いてみると、副業についてのお尋ねであった。「売り上げが0円に対し、経費が96万円ほど計上されているが、これは本当に副業を行っているのか」と確認された。

 

T氏のように、自宅の一部を使用して事業を行う場合は、事業使用分を按分(あんぶん)して経費計上することができる。按分とは「割合に応じて分けること」で、使用面積や使用時間など個々の判断で計算して、経費計上を行う。だが、これには相違が生じやすい。T氏もこの判断に疑問があった。

 

【T氏が計上した経費(96万円)の内訳】

家賃:120万円 → 60万円

水道光熱費:24万円 → 12万円

通信費:12万円 → 6万円

材料費:18万円 → 18万円

 

T氏は税務署職員の確認に、「自宅で趣味の革細工を行っており、製作作業に必要となった経費を計上したが、まだ革細工は売れていない」と説明。しかし、税務署職員の「どこで販売しているのか?」「宣伝活動は行っているのか?」との質問責めに辟易。実際はまだ販売活動を行っていなかったため、結局副業とは認めてもらえず、今年度の経費計上は取り下げになった。

 

最終的に、約40万円あったはずの節税金額は20万円ほど失われてしまった。

 

しかしT氏は、「確定申告の仕組みを知ることができたことはいい経験になった」と振り返る。翌年は革細工の販売をスタートさせ、少しずつ売り上げを伸ばしていきたいと意気込んでいる。

 

その後T氏は、手書きで作成した確定申告の内容を、国税庁ホームページ内の「確定申告作成ソフト」へ入力した。来年度こそは、簡単に作成することができそうである。

 

 

伊豫田 誠

FP事務所ストラット

代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー