国内の大手証券会社に勤務するA氏。「華やかなタワマン暮らし」にあこがれを抱き、38歳のときに1億2,000万円の湾岸エリアのタワマンを1室を購入しました。「退職後は悠々自適なリタイヤ生活を送りたい」と話すA氏ですが、はたしてうまくいくのでしょうか……。見栄っ張りでプライドの高いエリート会社員A氏の事例をもとに、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が解説します。
38歳で手取り月53万円のエリート会社員「全額ローン」でタワマン購入…見栄とプライドが招く「老後の悲劇」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

憧れの「湾岸エリアのタワマン」を購入したA氏だったが…

近年、建設ラッシュが続く東京都内のタワーマンション。一般的なマンションよりも高く存在感があり、美しく、目を引く外観を持っています。また、タワーマンションの入口やエントランス、ロビーなども、豪華で高級感があるところばかりです。

 

さらに、共用施設としてスパやジム、プール、コンシェルジュサービスなど、一流の設備やサービスが付帯されているところも多くあります。また、建物内にカフェやレストランなどの商業施設が入っている物件もあります。

 

都内で働く人にとっては、このような華やかな「タワマン暮らし」に憧れを抱く方も少なくないでしょう。A氏も、そのなかの1人でした。

 

タワマン購入後、毎月の収支は「赤字」

国内大手証券会社に勤務するA氏は妻と子1人の3人家族です。A氏が38歳(子どもが1歳)のとき、夜景と東京湾が一望できる眺望に魅了され、湾岸エリアのタワーマンションの40階の1室を購入。価格は約1億2,000万円で、35年の全額ローンで購入を決めました。

 

【A夫妻が購入したマンションの概要】

・新築/2LDK/57平米/40階

・最寄り駅徒歩12分

・物件価格……1億2,000万円

・管理費等……2万2,000円

・修繕積立金……9,000円

・頭金……10万円

・35年ローン/金利0.5%/ボーナス100万円/年

 

購入後、毎月の支出は以下になります。

 

【マンションに関する毎月の支出】

・ローン:24万1,000円

・管理費:2万2,000円

・修繕積立金:9,000円

 

……合計:27万2,000円

 

A氏の妻は専業主婦のため、A家はA氏の給料だけで生活している状態でした。手取り額は月53万円です。そこから毎月の生活費58万1,500円を引くと、なんと毎月5万円の赤字になっているといいます。

 

【A一家の毎月の支出】

・住宅費:27万2,000円

・交通費:3万円

・光熱費:3万円

・通信費:1万3,000円

・保険料:3万円(貯蓄型)

・学資保険:1万6,000円

・食費:6万円

・遊行費:10万円

・雑費:3万円

 

……合計:58万1,000円

 

この毎月5万円の赤字はボーナスで穴埋めをしていて、その他ボーナスからの出費を引くと、年間でみると約50万円の黒字になっているそうです。しかし、もちろんなんらかの理由でボーナスが減額されれば、すぐさま窮地に追い込まれることになります。

 

将来、妻がパートに出るなどして収入を増やすことも考えられますが、仮に子どもが増えればパートどころではなく、反対に生活費は増えていきます。

 

マイホームに寄せる思いは人それぞれですが、A夫妻から相談を受けた筆者は「よくこの状況でタワマンを購入したものだ」と内心考えてしまいました。