「自宅」か「施設」かで大きな違い…考えておきたい“終の棲家“
今回、Kさんに先立たれた奥様ですが、平均寿命を見るとわかるように男性よりも女性のほうが長生きする傾向にあるため、「終の棲家」についてもよくよく考えておく必要があるでしょう。
誰しも、最期は人の手を借りて生活する場面が増えてきます。生活の場として自宅(在宅)で継続して過ごすのか、場所を移して施設で過ごすのか、選択肢は大きく2つに分かれます。それぞれ、どれほど備えがあればよいのでしょうか。
在宅でも施設でも…一般的な「介護費用」の額は
生命保険文化センターが行った調査※では、過去3年間に介護経験がある人に「どのくらい介護費用がかかったのか」を聞いたところ、介護にかかった費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1ヵ月(5年1ヵ月)で、4年を超えて介護した人も約5割と、半数以上の方が長期間介護を行っていることがわかります。
※ 公益財団法人生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」より
上記のデータをもとに単純計算してみると、準備すべき介護費用は74万円+(8.3万円×61ヵ月)=580万円となります。日々の生活費とは別に準備しておきましょう。
なお、上記調査で介護を行った場所別に介護費用をみると、在宅では月額平均4.8万円、施設では月額平均12.2万円となっています。
在宅の場合…「リフォーム費」の考慮を
自宅で過ごす場合、持ち家であれば家賃は発生しませんが、身体の状態に合わせてリフォームが必要になる場合があります。
マンションであればバリアフリーになっていることが多いですが、戸建の場合には玄関や廊下などに段差があることも多く、リフォームが必要になるケースが少なくありません。また、足腰の筋力が衰えてくるとトイレや浴室に手すりを備え付ける必要も出てきます。
リフォーム代の目安は、以下の通りです。
・屋内の段差解消……1~10万円ほど
・玄関先の段差解消……10~60万円ほど
また、介護ヘルパーを利用する場合には介護サービス費が発生しますが、施設で過ごす場合と比較すると月々の負担は低く抑えることができます。
施設の場合…「タイプ」により金額に差
自宅で過ごすのは心細いという方は、施設に入所するという選択肢があります。ただし、「施設」と一口にいってもさまざまなタイプがあります。月額費用の相場は以下のとおりです。
・特別養護老人ホーム……5~20万円
・サービス付き高齢者向け住宅……13~23万円
・介護付き有料老人ホーム……20~35万円
など※
※ 施設の月額費用には介護サービス費、食費居住費、管理費などが含まれています。
また、特別養護老人ホームを除き、施設へ入居する際には一般的な入居費用としてサービス付き高齢者向け住宅で10~20万円ほど、介護付き有料老人ホームで30~600万円ほどかかります。
それぞれの施設によって方針・サービスの違いもあり、日々のレクリエーションが充実した施設もあれば、お酒やたばこなどの嗜好品が制限される施設もあるので、ご自身の生活スタイルに合った施設を探しましょう。
自分に合った介護サービスがわからない場合は、ケアマネージャーに相談するといいでしょう。ただし、ケアマネージャーにも医療に詳しい看護師から介護経験のある社会福祉士などさまざまな背景を持つ方がいますので、ご自身の意向に合った専門家を見つけてください。
まとめ
定年退職後の老後も、予想以上にさまざまな費用がかかります。またK夫妻のように、不測の事態が起こることも十分にありえます。
本来は夫婦2人で悠々自適な老後を過ごすはずであったK夫妻。妻は、今後必要になるであろう老後費用への不安から「死ぬまで働くしかないんですかね……」と、途方に暮れていました。
第二の人生を平穏に過ごせるよう、老後の生活に潜むリスクについて知っておくことが重要です。より詳細なプランを立てたい方は、お近くのFP事務所へご相談ください。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役