増えない給料、止まらない物価上昇……こうした状況で「老後にはなんの不安もありません」と答えられる人は一部の富裕層に限られるでしょう。実際のところ、現役時代に対策をしてこなかったまま老後を迎え、悲惨な生活に陥っているケースも少なくありません。とはいえ、「死ぬまで働き続ける」のも無理がある……。そこで今回、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が、65歳からでも年金を増せる5つの方法を紹介します。
月14万円では生活できません…65歳から「年金受給額」を増やす5つの方法【AFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金受取額を増やせる「5つの方法」

令和4年9月時点における厚生年金受給者の平均受取額は、およそ14万4,524円です。

※ 参照:厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和4年9月)

 

月々年金14万円だけで豊かに暮らせるかといえば、充分とは言い難いのではないでしょうか。「できれば年金の受取額をもっと増やしたい」と考えている人は多いでしょう。そこで、今回は65歳から年金受取額を増やす方法を5つ紹介します。

 

1.厚生年金へ加入を継続する

定年退職をする年齢はいまや、「60歳」から「65歳」が当たり前になりつつあります。2025年からは65歳までの雇用確保が義務となり、さらにいまでは70歳までの継続雇用制度の整備が努力義務となっています。年金の受給額を増やすために、体力や体調と相談しながら1年でも長く働き、「厚生年金の加入期間を延ばす」という選択肢があります。

 

厚生年金は70歳まで加入期間があります。厚生年金の受給額は納めた保険料に比例して計算されますから、健康で70歳まで働ける職場の環境が整っていれば、選択のひとつとして検討してみてください。

 

2.年金の「繰り下げ受給」を検討する

国民年金や厚生年金の公的年金は原則として65歳から受給開始となっていますが、年金の受給開始年齢は自分で選択することができます。65歳よりも早くもらうことを「繰り上げ受給」、65歳よりも遅くもらうことを「繰り下げ受給」といいます。

 

「繰り下げ受給」を選択した場合、受給する年金額は「繰り下げた月数×0.7%」となり、1年間遅らせると8.4%(0.7%×12ヵ月)、5年間遅らせれば42%(0.7%×60ヵ月)の増額となります。

 

つまり、70歳まで年金の受給を繰り下げれば年金受取額は42%増え、本来もらえる年金額より1.4倍ほど多くもらうことができるのです。さらに75歳まで繰り下げることができれば、受け取る年金額は84%増加します。また、この繰り下げ受給は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」で別々に繰り下げることができます。

 

現状、この年金繰り下げ受給を行っている人は受給者全体の1.3%ほどとなっていますが、手元の預貯金に余裕があり、しばらく年金受給が必要ないのであれば、状況に応じてぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

 

なお、年金繰り下げ受給の手続きは年金事務所、または街角の年金相談センターにて受け付けています。