「お金目当てと思われそう」、あるいは「まだまだ若いから大丈夫」と、なかなか親に相続の相談ができない人は少なくありません。親を傷つけずに円満に相続の話を切り出すには、どのような点に注意するべきなのでしょうか。今回は、両親と離れて暮らすAさんの事例とともにCFPの森拓哉氏が解説します。
「相続のことは心配するな」の一点張り…昭和気質で頑固な父を動かした、一人娘の一言【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

一人娘がついに結婚、しかしその相手は…

(※画像はイメージです/PIXTA)
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相続の相談は、子供から親にはなかなかしづらいものです。タイミングや言葉遣いにも気を使います。心配事を親に伝えると「お金目当てか」「あの世に早く行ってほしいのか」という誤解にも繋がりかねません。

 

一人っ子であるAさんは、親に万が一のことがあったときにどう対応すればいいか、ずっと心に引っかかっていました。Aさん一家は、父は公務員、母は専業主婦として、兵庫県の郊外の町で暮らしてきました。どこにでもありそうな平凡な家庭のなか、Aさんは両親からの愛情をたっぷりと浴び、大切に育てられてきました。

 

親としては、女の子だし、普通に育ち、普通に家庭を持ち、普通に近くで暮らしてくれたらそれでいいと思って育てていたのですが、人一倍努力家、頑張り屋さんのAさんは親の期待を上回ろうと、なにに対しても懸命に取り組んできました。地元の公立高校に入学したあとも勉学に励み、地元の有名国立大学に見事現役で合格を果たしました。親としても、「普通に育ってくれたらよい」と考えていたものの、娘の頑張りぶりに目を細めて喜んでいます。

 

とても優秀なAさんです。Aさんは大学生活までは親と同居して仲良く暮らしていたのですが、大学を卒業してからは有名企業に就職することになり上京します。親としては地元に残ってほしい気持ちもありましたが、Aさんの選択を尊重します。

 

「一人娘だから、きっとそのうち関西に戻ってきてくれるだろう」そんな淡い期待を抱いて、Aさんを東京へと送り出します。

 

Aさんはやはり就職先の会社でも仕事を大変頑張り、その頑張りが会社からも認められていきます。

 

就職して約10年が経ち、両親はそろそろAさんの結婚が気になりだしました。そんなとき、Aさんから「お父さんお母さん、会ってほしい人がいるの」という連絡が入りました。きっと結婚の話があり、関西に戻ってきてくれるのだと、両親は内心ドキドキしながらAさんの相手の男性と会うことになりました。

 

ところが相手の紹介を受け、両親は度肝を抜かしてしまいます。Aさんのお相手は、日本に働きにきていたアメリカ人の男性だったのです。Aさんが紹介をした男性もAさん同様に大変に優秀な方で、人柄的にも申し分ありません。仕事で知り合った彼とは短期間で意気投合。ところが、お付き合いが始まってすぐに、お相手の男性が本国にヘッドハンティングされて帰国することになったのです。Aさんは散々悩んだのですが、アメリカについて行く道を選びます。