「お金目当てと思われそう」、あるいは「まだまだ若いから大丈夫」と、なかなか親に相続の相談ができない人は少なくありません。親を傷つけずに円満に相続の話を切り出すには、どのような点に注意するべきなのでしょうか。今回は、両親と離れて暮らすAさんの事例とともにCFPの森拓哉氏が解説します。
「相続のことは心配するな」の一点張り…昭和気質で頑固な父を動かした、一人娘の一言【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続の相談が上手くいく条件

(※画像はイメージです/PIXTA)
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Aさんのケースでは、どんな場合に上手くいかず、どんな場合に上手く歯車が噛み合いだしたのでしょうか?

 

上手くいかなかったとき

 

・相続税の課題、私が困らないようにというAさん目線だけで困ることを重点的に話していた。

・真剣に話す様子はなく、軽い気持ちで話をしていた。

・両親がどうしたいか、どういうつもりでいるかという視点が欠けていた。

・仕事のできるAさんが、段取りよく合理的に話を進めようとしていた。その様子が親の気持ちを逆なでしていた。

 

上手く行き始めたとき

 

・親が困ることを具体的に想定して、そのなかでAさんができることを具体的に話し始めている。

・真剣に目をみて話している。

・素直な気持ちとして「ごめんなさい」を伝えている。

・側にいてほしいという母からいわれたくない言葉を、母の「気持ち」として承認している。

 

Aさんのように、子供の立ち場で親の相続を話す場合、自分の視点から困りたくないことを伝えてしまうケースがよくあります。気持ちはよくわかるのですが、子供都合の目線だけで、相続対策が進むことはまずありません。まずは親の目線でなにをどうしてあげたら問題が解決するのかという視線は常に持ちたいものです。

 

また、Aさんのように仕事に熱心に取り組んでこられた方は、「成果」というものを求めがちです。Aさんの子供としての成果は、親からすればどうでもいい話がほとんどです。成果があるとすれば、親が少しでも安心することでしょう。

 

遠く離れて暮らしているからなにもできないというわけではなく、Aさんのいうようにお金の管理などはできることの代表例です。小さなことでもいいので、できることを探して手伝ってあげる。たとえ自分が悪くなくても、気持ちがあれば「ごめんなさい」の気持ちを真剣に伝える。適当に扱わない。そんなことから動き出す相続対策があるということを、子供は知っておいたほうがいいように思います。

 

相続税対策や老人ホームもその先にある、ありうる1つのストーリーになるでしょう。離れて幸せに暮らすこと自体は、悪いことでもなんでもありません。

 

そういう意味では、Aさんがお母さんに謝る理由などないといういいかたもできます。一方、気持ちが交わされたときに話が動き出すこともよくあるお話です。真剣な「ごめんなさい」は、その最初の一歩になるのかもしれません。

 


 

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役