2月はじめ、衆議院予算委員会において同性婚の法制化について問われ、「社会が変わってしまう課題」と答えた岸田文雄首相。「パートナーシップ制度」を導入する自治体は少しずつ増えているものの、同性婚が認められない現状では依然として同性カップルがマイホームを購入する際、いくつかのハードルがあります。今回は、同性カップルが住宅ローンを組む際の「ハードル」と購入後の「リスク」、それらの解決策について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
2人で年収1,150万円の「同性カップル」、愛する人とのマイホームが欲しいだけなのに…住宅ローンを組む際の「高すぎるハードル」 (※画像はイメージです/PIXTA)

同性カップルが住宅ローンを組む際の金融機関の対応「3パターン」

同性カップルが連帯債務・ペアローンで住宅ローンを借りようとする際、金融機関によって対応に違いがあります。主に、大きくわけて次の3つのパターンがあります。

 

1.LGBTQ向けの住宅ローン商品を用意しているパートナーシップ制度の証明書や公正証書の提出は不要。ただし「連生型団体信用生命保険」への加入が必須。

 

2.同性パートナーを「連帯債務者」として受け付けるが、パートナーシップ制度の証明書、および任意後見契約および合意契約にかかる公正証書の提出が必要

 

3.想定していない

 

誤解のないように説明すると、単独債務(1人で住宅ローンを借りる)や現金での購入の場合は、同性カップルかどうかは問われません。これはあくまでも「連帯債務」や「ペアローン」を利用する場合です。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

項目1のパターンは、現在「ネット銀行」だけに存在します。パートナーシップ制度の証明書や公正証書の提出は必要ありませんが、連生型団体信用生命保険への加入が必須です。これは2人のうちどちらかが亡くなった場合住宅ローンの債務が免除されるという生命保険なのですが、金利の上乗せがあります(0.2~0.3%程度)。パートナーシップ制度の登録も、任意後見契約や合意契約にかかる公正証書も必要がないため魅力的です。

 

次に多いのは項目2のパターンです。パートナーシップ制度の証明書と、「任意後見契約」および「合意契約」に係る公正証書のすべて、もしくはいずれかの提出が必要です。任意後見契約とは、「信頼できる代理人を選び、もし自分の判断力が低下した場合の代理人の権限と範囲を決めておく」というものです。合意契約とは、2人のあいだの約束事をまとめ、「公正証書」として作成するものです。夫婦と同じように同居・扶養・貞操の義務や、権利関係、相続関係の約束事を残しておきます。自治体のパートナーシップ制度は婚姻制度ではないため、個別の義務や約束事を公正証書として残しておく必要があるのです。

 

しかし実際には、項目3のパターンがもっとも多いのが現実です。案件が少ないため、「想定していない」というものです。しかし今後は取り扱いする金融機関が全国で増えていくものと思います。

 

パートナーシップ制度を導入していない自治体に居住している場合は、項目1のパターンをとっているネット銀行を利用するか、証明書がなくても合意契約および任意後見契約に係る公正証書の提出のみで利用可能な金融機関を利用することになります。