2月はじめ、衆議院予算委員会において同性婚の法制化について問われ、「社会が変わってしまう課題」と答えた岸田文雄首相。「パートナーシップ制度」を導入する自治体は少しずつ増えているものの、同性婚が認められない現状では依然として同性カップルがマイホームを購入する際、いくつかのハードルがあります。今回は、同性カップルが住宅ローンを組む際の「ハードル」と購入後の「リスク」、それらの解決策について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
2人で年収1,150万円の「同性カップル」、愛する人とのマイホームが欲しいだけなのに…住宅ローンを組む際の「高すぎるハードル」 (※画像はイメージです/PIXTA)

依然「同性婚」は認められず…金銭面でハードルが高い同性カップル

2015年、日本で初めて、東京都渋谷区と世田谷区で「同性パートナーシップ」が導入されました。「同性パートナーシップ」とは、LGBTQカップルに対し「結婚に相当する関係」とする証明書を自治体が発行する制度のこと。これによって、銀行や保険会社・住宅・携帯電話会社での家族割など、社会生活のさまざまな場面で配慮を受けやすくなることを目指しています。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

2023年2月現在、パートナーシップ制度を導入する自治体は259まで広がっています。しかしながら同性婚とは異なるため、「パートナーの法定相続人になれない」、「遺族年金を受け取れない」など、法律上の制限が依然として残っています。このため、同性カップルが生活していくうえでは、将来を見据えて金銭面でのいくつかの「工夫」をしておく必要があります。この記事では、同性カップルが住宅を買うときの現状と対策について、事例を交えて説明していきます。

“そろそろ自分たちの家が欲しい”…同性カップルのAさんとBさん

「LGBTQ」と一言で言っても、性自認のあり方、カップルの組み合わせには種類があります。所得の現状にもそれぞれの問題があるのですが、ここではあくまで特定の事例を挙げて説明していきます。

 

Aさん
……35歳/男性(G)/会社員/年収600万円/預貯金500万円
Bさん
……38歳/男性(G)/会社員/年収550万円/預貯金700万円

 

・パートナーシップ制度がある自治体に居住
・どちらも両親や兄弟とは疎遠

 

AさんとBさんは、ともに平均的な年収で働くカップルです。交際して5年になった彼らは、住んでいる自治体にて「パートナーシップ宣誓」を行いました。これまではAさんが借りているマンションに2人で住んでいましたが、そろそろ自分たちの家を買いたいと思い始めました。

 

Aさんが理想的だと思った物件は、諸費用込みで約6,500万円。年収の10倍以上です。自己資金として預貯金を入れたとしても、Aさん1人の年収では住宅ローンの融資は難しいでしょう。しかし、Bさんの年収を合算して審査に臨むことができれば、融資を受けられる可能性は高まります。

 

2人の年収を合算して住宅ローンを組むことは、婚姻関係のある夫婦であればなにも問題のない話です。しかし同性カップルの場合、連帯債務やペアローンでの住宅ローンを利用しようとすると、金融機関での審査にハードルが存在します。