国土交通省の不動産価格指数によると、首都圏は、マンションが最高水準を継続し、戸建ても上昇。しかし、住宅市況については価格水準だけではなく、取引件数も加味して判断するのが適当だと、ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏はいいます。みていきましょう。
首都圏住宅市場(マンション・戸建て)の動向…価格は高水準だが取引戸数が減速、在庫は増加 (写真はイメージです/PIXTA)

1―価格は、首都圏のマンション・戸建てともに上昇しているが、伸びが鈍化

国土交通省の不動産価格指数によると、2022年8月の首都圏(南関東:1都3県)は、マンションが177.9(2010年平均を100とする)と最高水準を継続し、戸建てが121.3と上昇した。首都圏住宅市場は、引き続きマンションが牽引し、戸建てがマンションの価格を追う構造である(図表1)

 

不動産経済研究所によると、2022年10月の新築マンション価格は6,787万円と10年前の約1.6倍となったが、前年同月比で+0.5%と上昇ペースが減速している。また、東日本レインズによると、2022年10月の中古マンション価格は4,395万円と10年前の1.8倍、前年同月比で+13.1%となった。

 

しかし、住宅市況は価格水準だけから市況を判断するのは難しく、取引件数も加味して判断するのが適当である。

 

【図表1】
【図表1】

2―取引件数は、中古マンションと持家が急減速している

不動産経済研究所によると、2022年10月の新築マンション発売戸数は2,768戸(前年同月比+34.7%)と3ヵ月ぶりに増加した。月次公表値の12ヵ月移動累計でも3.3万戸(前年同月比+4.3%)を回復し、初月契約率は71.9%と5ヵ月ぶりの70%回復となった。2021年以降の売れ行きの伸びは一服したものの、国内市場は新築需要が強く、例年最も売れ行きの良い12月にさらに持ち直しが期待される。新築マンション市場では高水準の価格が継続すると思われる。

 

一方、東日本レインズによると、2022年10月の中古マンション成約件数は3,072戸(前年同月比▲10.7%)となった。地域別では東京都区部が前年同月比▲3.1%と比較的減少が少ないが、神奈川県(横浜市・川崎市以外)が▲21.3%、埼玉県が▲19.8%、東京都多摩が▲19.4%と減少が大きく、郊外の売れ行きが鈍っている。また月次公表値の12ヵ月移動累計でも3.6万戸(前年同月比▲9.0%)と7ヵ月連続の減少となった(図表2)。コロナ禍のテレワークの広がりなどから、住宅需要は郊外へと広がることを期待する向きもあったが、東京都区部の強さが際立っている。

 

【図表2】
【図表2】

 

国土交通省によると、2022年10月の首都圏の持家の新設住宅着工戸数は、4,723戸(前年同月比▲76.9%)と著しく減少した。持家の場合、土地を先に取得し、建物がある場合には取壊し、新たな建物を計画して建築する。つまり、時間の余裕と資金力が必要である。また、マンション用地の取引価格の高騰から、住宅地全体の価格が上昇しており、持家が購入希望者の予算外となった場合が相当数あるとみられる(図表3)

 

【図表3】
【図表3】

 

一方、2022年10月の首都圏の新築分譲戸建ての新設住宅着工戸数は、5,139戸(前年同月比+17.4%)となった。2021年5月以降は増加傾向で、2021年8月の前年同月比+87.6%、2021年12月の+82.7%、2022年9月の+61.6%など、複数の月で高い伸びとなった。月次公表値の12ヵ月移動累計でも59,850戸( 前年同月比+6.6%)と13ヵ月連続の増加となった。持家は個人名で、新築分譲戸建ては住宅供給者名で着工するのが通常である。価格水準の高い新築マンションや持家の代わりに新築分譲戸建てを購入する人が増加すると期待して、供給者が着工戸数を増加させたとみられる[図表4]。

 

【図表4】
【図表4】