よさそうなこと総花政策からの脱却を
1月末の総務省住民基本台帳の年報の公表前後、筆者に取材が殺到した。このままでは、この国の文化が消滅するかのごとく加速する人口減少問題への関心が高まってきたこと自体はよいことであるが、人々の人口問題に関する理解があまりにも統計的実態からかけ離れていることを思い知らされ、心が痛む。
人口問題を議論するにあたって、最大の課題は非科学的なアプローチが多いことだろう。人口問題は例えば「宇宙開発」「金融テクノロジー」などのように、専門性が高い人が議論しやすい分野というわけではなく、誰でも議論に参加しやすい分野である。それぞれが個人の価値観に基づき「良さそうなこと」を述べるものの、それが「科学的に有効なのか」は二の次といった事態になりかねない。
東京一極集中は国内での人口偏在をもたらし、エリアごと、ひいては日本全体の人口減に強く影響しているが、そのことを統計的(科学的)に正しく把握している人は多くないように思われる。
本稿では2022年年間における、東京都においてエリア外からの人口移動によって入れ替えが起こった人口(純増人口)の人口属性をランキング形式で解説したい。東京一極集中というパワーワードがもつイメージに対してではなく、実態に対してしっかりとした理解を持ったうえで、読者に議論参加して頂きたいからである。
実態に即さない対応策は、一見「良さそうなこと」には思えても、一極集中を変えるような効果を持つことはありえない。「火災の火元」を見極め、適切な対応策が講じられることを願いたい。
集中人口の本当の姿
2022年年間を通じて、東京都には3万8023人の人口が移動によって純増(社会増ともいう。転入数>転出数による転入超過)した。この3.8万人を人口属性別(男女別×5歳階級別)にみてみると、東京都一極集中は6つの人口属性において発生し、32の人口属性において減少している(図表1)。
つまり32パターンにも上る人口属性の移動による人口純減数の合計をはるかに上回る人口純増が、わずか上位6パターンの人口属性の移動で発生している、ということになる。