中小企業、原材料等高騰でも価格転嫁できず…ワースト1はトラック運送業
多くの中小企業で賃上げが難しいのは、原材料等の物価高を価格に転嫁できていないから、というのがひとつの理由。
中小企業庁がまとめた『価格交渉促進月間(2022年9月)フォローアップ調査』によると、直近6ヵ月間のコスト上昇分のうち、何割を価格転嫁できたを聞いたところ、「9割、8割、7割」が18.2%、「10割」が17.4%。一方で「3割、2割、1割」が17.4%、「0割」と「マイナス」を足し合わせた「全く価格転嫁できていない」が72.2%となりました。また価格交渉の状況について、「受注側企業から協議を申し入れ、話し合いに応じてもらえた」が58.4%に対し「全く交渉できていない」が13.9%でした。
特に価格転嫁に応じてもらえていない業種で際立っているのが、トラック運送業。価格転嫁状況の認識について、発注者の立場で「おおむね転嫁を受け入れている」は全業界最低の48.4%(全業種平均81.4%)、受注者の立場で「おおむね転嫁できている」割合は20.5%(全業種平均39.4%)。どの業種も共通して発注者の立場では「おおむね転嫁を受け入れている」の回答割合が高く、受注者の立場では「おおむね転嫁できている」の回答割合が低くなっています。なかでもトラック運送業界は、発注側でも受注側でも低迷している、という状況。業界全体として同業種間・異業種間の取引で価格転嫁が十分に進んでいないことが浮き彫りになっています。
厚生労働省『令和3年賃金構造統計調査』によると、トラックドライバーの平均給与(大型トラック運転手の所定内給与額)は月28.2万円(平均年齢49.9歳)で、手取りにすると22万円ほど。年収は463万1,900円です。全産業の平均は月収30万7,400円、推定年収が489万3,100円ですから、平均以下の業界です。
しかしネットショッピングの広まりで、宅配便の取扱量は10年で4割増。そのような状況でも、トラックドライバーは慢性的な人手不足。厚生労働省『令和3年11月 労働経済動向調査』によると、全産業の欠員率は2.3%に対し、トラック運転手含む運輸業・郵便業の欠員率は3.5%。しかも全産業の平均年齢は43.2歳に対し、大型トラック運転手の平均は49.9歳、それ以外の運転手で47.4歳。人手不足×高齢化、でも需要ひっ迫。それなのに価格転嫁が進まず、賃上げは絶望的といわれる始末。
もはや、私たちの生活に、なくてはならないネットショッピング。トラックドライバーの賃上げとなると、その影響は広範囲に及びますが、問題山積の運送業界。待ったなしの危機的な状況です。