(画像はイメージです/PIXTA)

2023年4月から、相続した土地を国に返すことのできる制度がスタートします。相続したものの、売ることも住むことも貸すこともできない、もてあました“負”動産を国に引き取ってもらえます。本記事では、日本弁護士連合会の専門WGの幹事として『相続土地国庫帰属制度』の制定に関与した弁護士の荒井達也氏が、新制度活用のポイントや注意点について分かりやすく解説します。

山林・原野を国に引き取ってもらうためのポイント

もっとも、誤解されやすいのですが、国が「制度の利用前に多額の費用を掛けて測量を行え」と言っているわけではありません。

 

すなわち、申請の際に、隣地との境界の写真を提出し、そこに隣人からクレームが入らず、国の現地調査で境界が確認されれば、制度上、国の審査に合格する可能性は十分にあります。

 

また、仮に利用者側で境界調査が必要だとしても、面積の小さい山林や原野であれば、莫大な調査費用は必ずしもかかりません。

 

そのため、面積の小さい山林や原野についても「国庫帰属制度」の利用を検討する価値は十分にあるといえます。

 

なお、審査の際に提出する必要書類としては、隣地との境界の写真以外にも、

 

①公図等の図面(土地の位置関係や土地の範囲を明らかにするもの)

②現地写真(建物の有無等の土地の形状がわかるもの)

③国への名義変更に関する承諾書等

 

上記がありますが、荒廃農地や面積の小さい山林・原野であれば、いずれも準備が難しいものではありません。

 

また、審査に合格した際に国に納める負担金も荒廃農地や面積の小さい山林や原野であれば、必ずしも高額にはなりません。

 

このような“負”動産を所有している読者は、ぜひ「国庫帰属制度」の利用を検討してみてください。

新制度以外の活路とは?ただし美味しい話には要注意!

「国庫帰属制度」の制定と時を同じくして、近年、民間企業による“負”動産ビジネスが勃興してきています。

 

例えば、メルカリの“負”動産版ともいえる、不要な不動産を個人間で売買するWEBサイトや、所有者から処分料を徴収し、“負”動産を引き取る事業者が現れています。

 

筆者の知る限り、これらの事業者は、決してボランティアで行っているわけではなく、営利事業として十分な収益を上げているようです。

 

もっとも、これらの事業者のなかには、詐欺まがいの業者が少なからず紛れており、国民生活センターからも、「原野商法の二次被害」が発生しているとして、注意喚起がなされています。

 

このような詐欺業者は、「“負”動産で子どもに迷惑をかけたくないが、不動産の知識がなく、どうしていいかわからない」という不動産所有者の弱みにつけ込むものです。こうした“負”動産に着目した新規ビジネスの領域は、法制度の整備が追いついておらず、消費者被害を効果的に防止する仕組みが不足していることも、詐欺取引を横行させる一因となっています。

 

つまるところ、“負”動産の処分について、美味しい話には最大限注意が必要ということです。

 

そのため、もし、こういった民間事業者のサービスの利用を検討する場合は、(手前味噌ですが)弁護士その他の法律専門家のアドバイスを受けながら、進めるのがよいでしょう。
 

荒井達也

弁護士

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