子沢山にメリットあり…フランスの出生率回復に貢献した「N分N乗方式」
「所得制限」のもと、なかなか支援が受けられない「高所得サラリーマン」。いま議論されている「異次元の少子化対策」においても、対象外だろうという諦めの声が聞こえてきます。そのようななか、参考にすべきという声が多く聞かれるのが、フランスの子育て支援策。
フランスでは1970~1980年代にかけて出生率が大きく低下。1970年には2.55人(女性1人あたり)だったのが、1980年には1.85人、1990年代前半には1.73人まで低下しました。それが2010年前後には2人を上回るまでに回復したのです。
その要因となったのが、手厚い子育て支援策。単純にお金をばらまくのではなく、多様な保育サービス、手厚い家族手当、仕事と子育ての両立支援策など、複合的な施策により、人口が増えも減りもしない「人口置換水準」近くまで出生率を回復させることに成功しました。
さらに高所得サラリーマンが注目するのが「N分N乗方式」。1946年、すでに導入されていたものですが、80年代に拡充され、出生率向上に大きく貢献したとされています。
この「N分N乗方式」。世帯課税所得額を「家族除数(N)」で除し、それに累進税率を適用して「家族除数(N)=1」あたりの所得税額を算出した後、再び「家族除数(N)」を乗ずることによって税額を算出する、というもの。前出の、年収1,200万円の会社員を例に考えてみましょう。
●年収1,200万円の夫、専業主婦の妻、子ども1人の世帯
1,200万円÷3(N分)=400万円
400万円×0.2(税率)80万円
80×3(N乗)=240万円
240万円-42.75万円(控除額)=197.25万円
●年収1,200万円の夫、専業主婦の妻、子ども2人の世帯
1,200万円÷4(N分)=300万円
300万円×0.1(税率)30万円
30×4(N乗)=120万円
120万円-9.75万円(控除額)=110.25万円
家族除数を簡単にカウントしたり、現行の日本の税率等に当てはめたりと、あくまでも説明上の計算ではありますが、この方法であれば、子どもが増えるほど税務メリットは大きくなる傾向にあります。もちろん、これだけで「子どもを2人、3人……」と考えるほど簡単な話ではないでしょうし、独身者や子どもを欲しても難しいという人からは異論もあるでしょう。ただ「税金、たかっ!」と日々、愚痴が止まらない高所得サラリーマンにはメリットも大きいはずです。
異次元とうたうからには、フランスの単なる真似事ではなく、それをも超える施策で本気を見せてほしいものです。