いつも蚊帳の外だった…ハブかれる氷河期世代、再び
就職難で人生が大きく狂った氷河期世代。そして、いま検討されている少子化対策は、結婚適齢期とされる人たちが中心ですから、氷河期世代である40~50代はほぼ対象外。自身が結婚適齢期だったときは収入が低く、結婚など考えられず、いまや「生涯未婚」の一人としてカウントされる、そんな人たち。「いまさら少子化対策といわれても」「もっと前に真剣に議論してくれたら」というような思いがこみあげてくるに違いありません。
さらに少子化対策とセットで語られる「賃上げ」。ここでも氷河期世代の40〜50代は蚊帳の外となっています。
今回の賃上げのムーブメント、止まらない物価高への対応から、首相自らがインフレ率を上回る賃上げを要請し、大企業を中心にそれに応える動きが活発化しています。ただその多くが、初任給や若手社員のベースアップが中心。若くて有能な人材を高い賃金で囲い込むという意図がみえますが、先が限られている中堅社員ははっきりいって「用済み」。そんな思惑が見え隠れしています。
そこに少子化の議論が加わり「若年層の給与水準を上げることが、少子化対策になる!」と後押し。賃上げの中心は新卒者~結婚適齢期となり、40代~50代の氷河期世代は後回しにされるという構図が鮮明になってきています。
この世代をないがしろにしたツケで少子化は加速した……その反省から、今回の議論がなされているという側面がありますが、再び、氷河期世代を後回しにすることの弊害はないのでしょうか。
非正規の氷河期世代が賃上げの対象外となれば、さらに生活は困窮。浮上が難しくなることは確実です。さらに親となった氷河期世代、その子どもは、中学~高校、そして大学生くらいですが、親の賃金があがらなければ、進学という面で影響が出る可能性があるでしょう。コロナ禍、親の収入が減少し、そのあおりで生活苦に陥る学生が問題視されました。なかには経済的な困窮から退学という選択をするケースも珍しくなく、「親の収入が減少→人生設計が狂う」という若者が増加したのです。同じようなことが、また繰り返されようとしています。
「親の収入が心許ないなら奨学金があるじゃない」という意見も。しかしこれは「卒業と同時に借金地獄」とイコール。結局、経済的な理由で結婚に踏み切れない若者を生むだけです。
今回もまた、蚊帳の外になりそうな氷河期世代。負の連鎖はその子どもにも及ぶと警鐘を鳴らす専門家も。少子化対策も賃上げも、多視点で検討・議論を進めてもらいたいものです。