65歳以上の10人に1人が悩む「手のふるえ」…たった2泊3日で改善する最新の治療法【専門医が解説】

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65歳以上の10人に1人が悩む「手のふるえ」…たった2泊3日で改善する最新の治療法【専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

65歳以上の約10人に1人が悩んでいるといわれる手のふるえ……「歳のせいだから」などと放置してしまいがちですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。そのようななか、手のふるえを治療する「低侵襲手術(患者への身体的ダメージが少なくてすむ手術)」について、森山脳神経センター病院FUSセンター技師長の堀大樹先生が解説します。

「手のふるえ」を治す最先端手術

FUSの正式名称は、MRガイド下集束超音波治療(Transcranial MR-guided Focused Ultrasound Surgery)といいます。これでは長いので、全国的にはFUS(エフユーエス)と略して呼ばれています。主に手のふるえを治療する低侵襲的な最先端手術の1つです。

 

2019年に本態性振戦(ほんたいせいしんせん)に対する公的医療保険の適用が認められ、2020年には振戦優位型パーキンソン病の治療における公的医療保険の適用が認められました。

 

当院では2021年6月からFUS治療を開始し、現在(2022年11月現在)まで、78症例のFUS治療と、日本でもトップクラスの手術件数です。

 

今回は、このFUSについて詳しくご紹介します
※ 参照記事:『うまく文字が書けない…自分の意志とは関係ない「手のふるえ」の正体【専門医が解説】』(https://gentosha-go.com/articles/-/40937

ふるえの原因は「脳神経回路の異常」

FUSでもっとも多く治療されているのは「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」です。このふるえは、脳内の運動神経回路が異常を起こすことで発症すると考えられています。

 

正常の運動神経回路では、大脳皮質から延髄(えんずい)、そして手足へ向かって運動の命令信号が伝わり、その後手足から運動が行われた完了信号が延髄から視床を中継して大脳皮質へ戻ってきます。

 

一方で、本態性振戦の場合、筋肉より戻ってくる神経回路に異常が生じ、運動完了の信号が正しく戻ってこないために、大脳皮質より運動の命令信号が出続けてしまうことでふるえが起こると考えられています[図表1]。
 

[図表1]ふるえが発生するメカニズム

 

したがって、我々はこの運動信号が戻ってくる神経回路の中継点である視床:ventral intermediate nucleus(VIM核)をFUSで焼灼治療します。

 

FUSはメスを使わず、超音波で治療

超音波は皆さんご存じの通り、体に無害なエコー検査で使用されるものと同じです。では、なぜFUSでは、そのような無害な超音波で脳の深部を焼くことができるのでしょうか?

 

当然、1本の超音波ビームでは脳の深部にある視床VIM核を焼く力は持っていません。しかし、最大で1,024本という多くの超音波ビームを1点に集束させることで、視床VIM核を焼くことができます[図表2]。

 

イメージとしては、太陽光を虫眼鏡で1点に集めると、黒い紙が焼ける現象によく似ています。焼くといっても、100℃のような煮えたぎるような温度ではなく、55℃から60℃程度です。大きさは「約5mm程度」と、非常に小さい範囲を焼くだけでふるえが改善されます。

 

[図表2]集束超音波による治療イメージ

 

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