両者とも「正当なジャッジ」…Aさんが余裕をもって融資を受けるためには
一般論としては、Aさん一家は借入年収倍率として、年収600万円の5~7倍(3,000万円~4,200万円)が借入妥当額である。かつ、物件の頭金2割は準備しておきたいところ。
5,500万円のマンション購入を目論むのであれば、本業での安定年収が約800万円あれば、返済比率は
B銀行:実行予定金利0.5%で毎月14万2,771円宛返済×12ヵ月÷800万円×100=21.4%
C信用金庫:審査金利2%で毎月18万2,194円宛返済×12ヵ月÷800万円×100=27.3%
と、双方ともに懸念無きレベルとなる。
また、頭金として拠出するまではいかなくとも貯蓄額が1,100万円(物件5,500万円の2割)あれば、今後のライフプランの変化に柔軟に対応でき、かつC信用金庫の担保処分価3,520万円に1,100万円上振れすれば返済開始約7年で到達することになり、(7年経過までは実質担保割れ)見たぶりも改善される。
まとめ…「ライフプランニング」で可視化を
今回のようなケースでは、まずは将来設計「ライフプランニング」を作成してみるといいだろう。「ライフプランニング」とは未来の家計簿のようなもので、今後想定される収入・支出・貯蓄額を見える化・数値化することができる。
マンション購入によって、教育費や老後資金に懸念は出ないのか、住宅ローン自体はきちんと返済できるのかをライフプランニングによって判断すべきだ。作成にあたっては、信頼できるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめする。
Aさんがマンション購入するにあたり、「借りられる金額」と「返せる金額」は異なる。B銀行・C信用金庫ともに正当なジャッジを下しているといえ、それをもとに実行に移すのはAさん自身だ。非常に悩ましい案件であり、少しでも不安を感じるようであれば、ライフプランニング表を客観視してみるとよいだろう。
「信金の神様」と称された小原鐵五郎氏の言葉に「貸すも親切、貸さぬも親切」がある。
B銀行・C信用金庫ともに与信判断としては間違いではない(むしろ正解は無い)。本件事案では、Aさん一家が「真に望む人生」をよく考察すべきである。本当に「いま、そのマンションを購入すべき」かどうかを。
【参考】
※返済比率:年収に占めるローンの年間返済額の割合、「高くても40%以下」が一般的目安。
※担保評価額:市場価値概念とは異なり、客観的・合理的な評価方法で算出した評価額。
※借入年収倍率:住宅ローンが年収の何倍か、業種によっても目安は異なる。
加藤 勇
FP Office株式会社
ファイナンシャル・プランナー