毎年、誕生月に手元に届く「ねんきん定期便」。50歳を超えると、年金見込み額が記されるようになり、より具体的な老後プランを考えられるようになるでしょう。しかし複雑怪奇な年金制度、そこには頭をかしげるような言葉も。みていきましょう。
手取り32万円の50歳・会社員「ねんきん定期便」で年金月16万円(予定)と知ったが…ふと疑問「経過的加算」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

ねんきん定期便に書いてある「経過的加算」とは?

老後のマネープランを考えるうえでも役に立つ「ねんきん定期便」ですが、よく分からない記述に首をかしげることも。

 

たとえば「経過的加算部分、なんだ?」といったように(下図参照)。どうも老齢厚生年金にプラスされるらしい「経過的加算」。日本年金機構の老齢年金ガイドでは「経過的加算額」と記され、「差額加算」といわれることもあります。

 

出所:日本年金機構『「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド』より
【図表】「ねんきん定期便」50歳以上の様式 出所:日本年金機構『「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド』より

 

経過的加算は20歳未満や60歳以降に厚生年金保険に加入していた場合に、老齢厚生年金に上乗せして支払われるもの。昭和61年4月に老齢基礎年金制度ができる前後の差額を埋めるため設けられました。その前後で、厚生年金加入者の65歳以降に受け取る年金は、「定額部分+報酬比例部分+加算額」から「老齢基礎年金+経過的加算+報酬比例部分+加算額」となりました。定額部分が老齢基礎年金となった際、老齢基礎年金のほうが小さくなったため、その差額を補うために経過的加算を加えることになったのです。

 

具体的には、「特別支給の老齢厚生年金の定額部分」と「厚生年金保険に加入していた期間における老齢基礎年金」との差額から計算します。たとえば前出の会社員。60歳定年後、63歳まで会社員を続けると、「定額部分(1,621円×480ヵ月)-(777,800円×444÷480)」で、経過加算は5.8万円ほどになります。

 

経過加算によって、60歳定年時点で厚生年金への加入が40年に達しておらず、60歳以降も会社員を続けるのであれば、報酬比例部分だけではなく、経過的加算によっても厚生年金の年金額を増やすことができます。

 

現在、多くの企業で定年は60歳としているものの、継続雇用で希望すれば65歳、さらには70歳まで働けるケースが増えています。厚生年金は70歳まで加入でき、その期間だけ年金額は増えていきます。ねんきん定期便などで加入期間の確認し、定年以降のライフプランを検討するのがおすすめです。