新自由主義のもとでの貧富の拡大
フランスの経済学者トマ・ピケティは、フランス税務当局が保有する所得税申告についてのデータを使い2001年に著書『フランスの20世紀における高所得』を公刊しました。
次にピケティは、フランスの場合と同様の手法によって、世界の経済学者の協力を得て、アメリカ、アングロ・サクソン諸国と大陸ヨーロッパ諸国における動態を比較する『21世紀の資本』(著者トマ・ピケティ。みすず書房。2014年)を刊行しました。ここでは、その中でのアメリカについての研究結果を主に述べます(他についてもほぼ同じ結果が現れています)。
ピケティは、[図表1]のアメリカにおける所得上位10%の所得が、国民総所得に占める比率が、1980年代から(レーガノミクス、サッチャー改革に符合します)30年間にわたって極めて急激に不平等を拡大させていったことを明らかにしました。
(1)1940年頃まで所得上位10%の所得が、GDPに占める比率が45%前後と高い時期(省略)
(2)1942年頃から所得上位10%の所得が、GDPに占める比率が32%前後と低かった時期(省略)
(3)所得上位10%の所得が、GDPに占める比率が急増し始めた1980年代以降
1980年代からは、新自由主義(レーガノミクス、サッチャー改革)に転換し、富裕層や大企業に対する減税(つまり、累進課税を廃止)などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになりました。
この時代はグローバル化と高度情報通信化が進み、アメリカの製造業が衰退し(海外シフトし国内産業の空洞化が進み)、金融資本主義が進展した時代でした。
そしてピケティは、現代の欧米は(富裕層にとって)「第2のベル・エポック(良き時代)」に突入し、中産階級は消滅へと向かっているとしています。つまり、今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して、寡頭制を生みだしているとしています。