元通産省官僚・株式会社二十一世紀新社会システム研究所代表である、本田幸雄氏の著書『劇症型地球温暖化の危機 太陽光エネルギー革命で日本を再生する』より一部を抜粋・再編集し、世界における貧富の差について見ていきます。
労働者は「いつまでも裕福になれない」…“世界中で格差拡大”のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

貧富の格差を縮小するのは「累進課税+技術革新」?

『21世紀の資本』の理論はあまりありませんが、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式が見出されています。rとは、利潤、配当金、利息、貸出料などのように、資本から入ってくる収入のことです。gは、給与所得などによって求められます。

 

過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度でしたが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになりました。このことから、経済的不平等が増していく基本的な力は、r>gという不等式にまとめることができます。

 

この不等式が意味することは、資産(資本)によって得られる富、つまり資産運用により得られる富は、労働によって得られる富よりも成長が速いということです。

 

言い換えれば「裕福な人(資産を持っている人)はより裕福になり、労働でしか富を得られない人は相対的にいつまでも裕福になれない」ということです(逆に言いますと、経済成長率が1~2%と低すぎるともいえます。日本などは1990年代以降はゼロ成長です)。

 

すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位1%、10%、といった位置にいる人の方がより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しているのです。

 

蓄積された資産は、子に相続され、労働者には分配されません。格差は現在も拡大に向かっており、このままいくと、やがては中産階級が消滅すると考えられます。

 

そこでピケティは、不均衡を和らげるには、最高税率年2%の累進課税による財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせればよいとしています。その際、富裕層が資産をタックス・ヘイヴンのような場所に移動することを防ぐため、この税に関して国家間の国際条約を締結する必要があるとしています。

 

以上のようなことから、アメリカによって代表される資本主義を改革するには、r>gにおいて、資本収益率(r)を抑えて、つまり、累進課税を復活させて、経済成長率(g)を高める、つまり、技術革新を進めることが必要ということになります。

 

 

*****************************

本田 幸雄

1942年、島根県生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業。通産省入省、重工業局、資源エネルギー庁、工業技術院、(文部省出向)長岡技術科学大学教授、通産省機械情報産業局、中国通産局長。

 

通産省退職後、医療福祉研究所、(財)愛知国際博覧会協会などを経て、現在、(株)二十一世紀新社会システム研究所代表。

 

著書に『21世紀の社会システム』、『水田ハ地球ヲ救ウ』、『ベンチャービジネス成功への決定的条件』、『西暦2000年への選択』(監訳)、『地球白書』(監訳)、『21世紀地球システムの創造』(共著)など。