原則、65歳から受給が開始される公的年金。ただその制度は複雑で、「全然理解できない!」という人も多いようです。そのため、少し考えれば分かりそうなことでも「知らなかった……」というケースも多いようです。みていきましょう。
年金月17万円のはずが…65歳・元会社員「年金振込通知書」で気づいた、腹が立つが「当たり前すぎること」 (※写真はイメージです/PIXTA)

少々複雑な年金の「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」

学校卒業後、社会の荒波に投げ出され、日々、苦しい思いをしてきた日本のサラリーマン。40年あまり働き続け、やっと手にする公的年金。2000年の法律改正で、会社員や公務員だった人が手にする老齢厚生年金の支給開始年齢は、60歳から65歳となり、2013年度から2025年度にかけて段階的に引き上げられています。また女性は、男性より5年遅れ、2018年度から2030年度に行われます。

 

60歳定年の場合、年金の支給開始年齢が引き上げられたことで、無収入期間が生まれる人も。そこで検討したいのが老齢厚生年金の繰上げ受給です。

 

60歳以降であれば支給開始年齢に達していなくても、老齢厚生年金を受け取ることができます。ただし無条件、というわけにはいかず、受給開始を1ヵ月早めるごとに、0.4%(2022年4月から。1962年4月2日以降生まれが対象で、それ以前は0.5%)受給額が減額されます。減額された受給額が一生続くことになるので、しっかりと検討することが必須です。

 

たとえば平均受給額を加味して、年金月17万円の場合、考えてみましょう。昭和37年4月2日以降生まれで、老齢基礎年金・老齢厚生年金、どちらも繰り上げ受給することとします。

 

■60歳0ヵ月で年金受給開始

 17万円×0.76=年金月12.92万円が一生続く

■61歳0か月で年金受給開始

 17万円×0.808=年金月13.736万円が一生続く

■62歳0か月で年金受給開始

 17万円×0.856=年金月14.552万円が一生続く

■63歳0か月で年金受給開始

 17万円×0.904=年金月15.368万円が一生続く

■64歳0か月で年金受給開始

 17万円×0.952=年金月16.184万円が一生続く

 

一方で、年金の支給開始年齢を遅らせる(繰り下げる)こともできます。繰り下げできる年齢の上限は、 75歳まで引き上げられました。また老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれで繰下げ請求を行う時期を選択できます。同じように年金月17万円、老齢基礎年金・老齢厚生年金、どちらも繰り下げ受給する場合を考えていきましょう。

 

■66歳0ヵ月で年金受給開始

 17万円×1.084=年金月18.428万円が一生続く

■67歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.168=年金月19.856万円が一生続く

■68歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.252=年金月21.284万円が一生続く

■69歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.336=年金月22.712万円が一生続く

■70歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.42=年金月24.14万円が一生続く

■71歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.504=年金月25.568万円が一生続く

■72歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.588=年金月26.996万円が一生続く

■73歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.672=年金月28.424万円が一生続く

■74歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.756=年金月29.852万円が一生続く

■75歳0か月で年金受給開始

 17万円×1.84=年金月31.28万円が一生続く