家賃が払えない…低年金・高齢単身の賃貸暮らしの困窮ぶり
——すみません、家賃が払えません
そう大家に頼み込んでいる借主。ドラマや映画でみるようなシーンですが、そこまで非現実なものではありません。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』によると、2020年下半期、2ヵ月以上の家賃滞納率は1.1%。賃貸住宅が100戸あれば、1戸は家賃が払えないという状況だということ。家賃滞納、決して物語の中の話ではないのです。
家賃が払えないほどの困窮者、その代表格といえるのが、単身の高齢者です。総務省統計局『令和2年 国勢調査』によると、高齢者の約5人に1人が一人暮らしで、その3割以上が賃貸暮らし。同世代の二人以上の世帯の持ち家率は9割を超えるので、それと比べると、おひとり様高齢者の賃貸率は圧倒的に高いといえます。
孤独死リスクが高いため、高齢単身者ほど大家は毛嫌い。賃貸契約の審査は厳しくなるなか、賃貸率が高いとなると大変です。株式会社R65が行った調査によると、高齢者の4人に1人が「不動産会社に入居を断られた経験がある」と回答。さらに「5回以上断られた」という経験がある人は13.4%にもなります。そうなると「住居費を抑えるために家賃の安い物件へ」という対策もできず、家賃滞納へと加速していくという実情があります。
高齢者の収入源といえば公的年金。年金生活者の半数が「収入は年金のみ」だとされています。厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均受取額(国民年金+厚生年金)は、65歳で14万5,557円。70歳で14万3,755円。75歳で14万7,519円、80歳で15万7,097円、85歳で16万2,711円。
また厚生年金受給者で受給額が月10万円に満たない人は23.3%。5万円にも満たない人は2.6%います。年金月5万円、そこから家賃を払い、残りで光熱費を払い、食費を払い……低年金の賃貸暮らしの高齢者、その生活の困窮ぶりが目に浮かびます。