日本の金融教育は世界的にみると、圧倒的に遅れていると言わざるを得ません。例えば日本では、義務教育期間における金融教育の授業は、中学3年生時に1~5時間程度行われます。しかし、英国を例に挙げると、小学生は全学年を通じて金融を学習する機会が設けられています。年間2,000名以上の子どもたちに出張授業という形で金融教育プログラムを提供する盛永裕介氏は「子どもたちのお金に関する知識の低さは、将来のキャリア選択にも影響する」と指摘します。子どもたちが金融リテラシーを身に着けることで将来の選択肢をどのように広げられるか? 実際の事例をもとに解説します。
「貯蓄」から「投資」の時代へ。子どもの生涯年収に大きな影響をおよぼす、金融教育の実態をレポート (※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の金融リテラシーは本当に低いのか?

日本人の金融リテラシーは、世界の主要国と比較して低いと言われています。

 

金融広報中央委員会(2022)1)によると、18歳から79歳の個人30,000人を対象に金融リテラシーの正誤問題を出題した結果、金融知識に関する設問の正答率がそれぞれ「インフレ」63.3%(OECD調査参加国平均78.0%)、「分散投資」50.2%(OECD調査参加国平均58.9%)、「お金への注意」58.6%(OECD調査参加国平均67.2%)であり、OECD参加国に対して日本の金融リテラシーは、金融知識や行動などを含め全般的に劣っていることが分かりました。

2022年4月より、18歳から金融に関する契約を結べるように

ここでの正答率が高い人は「金融トラブルを経験した人の割合が低い」とみられています。2022年4月より、18歳以上であれば保護者の同意なしに不動産賃貸や携帯電話の契約、クレジットカードやカードローンの契約、証券口座の開設ができるようになりました。

 

しかし、若者を狙った投資詐欺や金融トラブルへの対策・整備が十分に敷かれているは未だ言い難い状況です。だからこそ、若者が投資詐欺や金融トラブルから自分の身を守るためにも、金融リテラシーを高めていく必要があります。

金融教育必修化で教育現場からは悲鳴も

金融経済教育推進会議2)によると、高校生までに身につけるべき金融リテラシーは、 (ⅰ)家計管理、(ⅱ)生活設計 、(ⅲ)金融知識・金融経済情勢の理解・適切な金融商品の選択 、(ⅳ)外部の知見の適切な利用 の以上、4分野に分類できると示されています。

 

特に「(ⅲ)金融知識・金融経済情勢の理解・適切な金融商品の選択」については、2022年度以降の高校家庭科の授業で「資産形成」の視点に触れるよう規定されており、生徒は金融商品のリターンやリスクについて理解することが求められています。

 

しかし、一部教員からは「教科書の内容では金融商品の特徴がうまく説明できない」「『資産形成』のリスク管理を教えられる自信がない」などの声が続々と上がっています。金融教育が必修になったとはいえ、教員は曖昧な情報を生徒に伝える訳にはいかないので、教員によって授業では「資産形成」の内容にあまり触れないという場合もあるでしょう。