(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●パウエル議長は11月30日の講演で、利上げの減速時期は早ければ12月となる可能性を示した。

●米市場は株高、長期金利低下、ドル安の反応、この流れが続くか否かは12月の米イベント次第。

●米雇用統計とCPIの内容によりFOMCのタカ派度合いも変化するため、株価などへの楽観は禁物。

パウエル議長は11月30日の講演で、利上げの減速時期は早ければ12月となる可能性を示した

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11月30日、米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所で講演を行いました。主な発言は図表1の通りですが、パウエル議長はこの日、利上げ効果が完全に表れるのはこれからで、インフレ抑制に十分な引き締め水準に近づくにつれ、利上げペースを緩やかにすることは理にかなっているとし、利上げの減速時期は、早ければ12月の会合になるかもしれないと述べました。

 

(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]パウエル議長の主な発言の骨子 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

その一方で、インフレ抑制のために、あとどれくらいの利上げが必要か、また、政策金利を引き締め水準で維持するのに、どれくらいの期間が必要か、といったことの方が、利上げ減速の時期よりもはるかに重要との見解を示しました。また、物価安定の回復には、政策金利をしばらく引き締め水準で維持する必要があるとし、歴史は時期尚早の金融緩和に対し強く警告していると述べ、市場の早期緩和期待を牽制しました。

米市場は株高、長期金利低下、ドル安の反応、この流れが続くか否かは12月の米イベント次第

パウエル議長の発言内容は、基本的に従来の見解に沿ったものであり、特段目新しいものではありませんでした。しかしながら、12月13日、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)直前で、同会合での利上げペース減速が示唆されたことや、想定外に強いタカ派姿勢は確認されなかったことから、市場に安心感が広がった模様です。同日の米国市場では、株高、長期金利低下、ドル安の反応がみられました。

 

パウエル議長の講演は、市場にとって総じて好ましい結果となりましたが、この流れがこの先も続くか否かは、12月の米経済指標とFOMCの内容次第になる可能性が高いと思われます。米経済指標については、特に12月2日に発表が予定されている11月雇用統計、そして12月13日に発表が予定されている11月消費者物価指数(CPI)に市場の注目が集まっています。

米雇用統計とCPIの内容によりFOMCのタカ派度合いも変化するため、株価などへの楽観は禁物

現時点での11月雇用統計の市場予想は、非農業部門雇用者数が前月比20万人増(10月は同26.1万人増)、失業率は3.7%(10月は3.7%)です(図表2)。

 

(注)市場予想は2022年12月1日時点。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]11月米雇用統計とCPIの市場予想 (注)市場予想は2022年12月1日時点。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

11月CPIの市場予想は、前月比+0.3%(10月は同+0.4%)、エネルギーと食品を除く指数は前月比+0.3%(10月は同+0.3%)です。いずれも市場予想比で弱めの結果なら、利上げペース減速の思惑から、株高、長期金利低下、ドル安の反応が予想され、強めの結果なら逆の反応が見込まれます。

 

12月のFOMCでは、特にメンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が焦点になると思われます。パウエル議長は今回、ドットの上方修正を示唆しており、実際にそうなる公算は大きいとみています。FOMCでも市場の早期緩和期待は牽制されると考えますが、11月雇用統計と消費者物価指数の結果次第では、その度合いが強まることも想定され、株価などの先行きは、引き続き慎重にみておくことが必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエルFRB議長発言のポイントと12月重要イベントの整理【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

 

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