ある企業に勤める32歳の会社員Fさん。新卒で入社してから10年、地道に頑張り少しずつではありますが収入も増え、現在450万円です。高収入ではないものの、このまま普通に暮らせると思っていたFさん。しかし環境の変化により、Fさんは「奨学金」の存在に苦しめられるのでした。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が、Fさんが陥った“どん詰まりの現実”をみていきます。
年収450万円・32歳会社員「後悔しています」…日々の生活を圧迫する「奨学金」の返済額【AFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナの影響でボーナスカット…突然「奨学金」が重荷になった会社員Fさん

Fさんは一般企業で働く会社員です。いまの会社に就職してから10年が経ち、そのあいだ少しずつではありますが収入は増えていました。

 

しかし、コロナの影響でボーナスが一部カットとなり、昇給も白紙になってしまいました。最近は、これまで気にしていなかった「奨学金」が重荷になっています。

 

両親は一般企業に勤める会社員でしたが、子どもの進学費用を準備しきれなかったためにFさんが大学へ進学するには奨学金を利用する必要がありました。「大学へ行きたいなら奨学金を利用しないと進学できないよ」と両親から言われていたFさんは、あまり深くは考えず高校在学中に奨学金の利用手続きを済ませました。

 

私立大学の文系へ進み、留年することなく卒業。学費と生活費で年間200万円ほどかかりましたが、飲食店と家庭教師のアルバイトを掛け持ちして月々7万円ほど稼ぎ、足りない部分は毎月10万円の奨学金で補うことができました。

 

アルバイトは大変でしたが、一生涯付き合える友人ができました。学内のサークル活動も楽しく、Fさんの大学生活は充実していました。在学中には奨学金を利用している友人もたくさんいたため、奨学金を利用していることに負い目を感じることもありませんでした。

 

卒業して半年ほど経ち、奨学金の返済が始まりました。大学在学中の4年間で総額480万円を借りており、返済額は月々約2万円(金利0.3%で計算)、返済期間は20年です。

 

少ない手取りから奨学金を返済していたため、20代のあいだにまとまった貯蓄をすることはできませんでしたが、これまでなんとか滞ることなく返済を続けてきました。

 

しかし、30代となり、ようやく余裕が出てきたタイミングで新型コロナウイルスが流行。当てにしていたボーナスが減ってしまい、昇給も見込めなくなってしまったのです。ボーナス払いでクレジットカードを利用していましたが、ボーナスがカットされたために貯蓄にも余裕はありません。

 

Fさんは、「奨学金さえなければコロナ禍でも日常生活を楽に過ごすことができたのに」と思うことが増えました。

 

ついには、奨学金を滞納するようになりました。さらに滞納したまま手続きをせず放置してしまったため、延滞金も発生しています。

 

仕事にやりがいもなく、早く辞めて他の仕事をしたいと考えていますが、具体的な転職先はありません。転職して給料が下がるとなると、状況は悪化するばかりです。これから先のことを考えると憂鬱になる日々が続いています。