1986年~91年のバブル景気のころ就職した「バブル世代」も、いまや50代。定年を控え、老後の資金繰りに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、定年直前まで「無対策」で生きてきた59歳会社員K氏の収支シミュレーションをもとに、安心した老後を送るための資金形成について解説します。
年収580万円、中小企業勤務の59歳会社員…定年間近だが「75歳まで働かせてください」のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

K氏の収支シミュレーション…75歳まで「働くしかない」現実

一般的な中小企業の退職金平均、中小企業勤務時の平均年収は下記の通りです。K氏の収支と比較してみましょう。

 

<中小企業の退職金平均>

大卒:約1,100万円

高卒:約1,000万円

(出所:東京都産業労働局 令和2年中小企業の賃金退職金事情)

 

<中小企業の年齢別平均月収>

00~19歳……18万8,000円

20~24歳……21万7,000円

25~29歳……23万8,900円

30~34歳……26万6,600円

35~39歳……29万4,600円

40~44歳……31万9,000円

45~49歳……33万9,100円

50~54歳……35万6,400円

55~59歳……35万9,400円

60~64歳……28万8,200円

65~69歳……26万2,500円

70歳以降……26万6,100円

(出所:厚生労働省の令和3年賃金構造基本統計調査より)

 

上記の数字から、再雇用になると、一般的に55~59歳の「35万9,400円」から60~64歳では「28万8,200円」と7万1,200円ダウン、65~69歳では「26万2,500円」と9万6,900円ダウン。月収が年齢を重ねるにつれ減ってしまうことがわかります。

 

他方、K氏の年齢ごとの収支をみてみましょう。

 

<59歳収支>

・合計消費支出:44万5,000円

 

【内訳】

食料:5万円
住居:10万円
光熱・水道:2万円
家具・家事用品:1万円
被服及び履物:5,000円
保健医療:1万5,000円
交通・通信:1万5,000円
教 育:20万円(仕送り込み)
教養娯楽:1万円
その他の消費支出:3万円

 

Kさんは、ボーナスを含めた「年間580万円(月額48.3万円)」でなんとか生活している状況です。60~61歳で予定される収支はどうでしょうか。シミュレーションしてみます。

 

<60~61歳収支>

・合計消費支出:34万5,000円

 

【内訳】

食料:5万円
住居:10万円
光熱・水道:2万円
家具・家事用品:1万円
被服及び履物:5,000円
保健医療:1万5,000円
交通・通信:1万5,000円
教 育:10万円(仕送り込み)
教養娯楽:1万円
その他の消費支出:3万円

 

教育費が1人分減った状態でも、再雇用後の「月収27万円」では赤字です。もし退職した場合、夫婦の年金20万円でも赤字となるため再雇用が必要であることがわかります。62歳以降はどうでしょうか。

 

<62~74歳収支>

・合計消費支出:25万5,000円

 

【内訳】

食料:5万円
住居:10万円
光熱・水道:2万円
家具・家事用品:1万円
被服及び履物:5,000円
保健医療:1万5,000円
交通・通信:1万5,000円
教 育:0円
教養娯楽:1万円
その他の消費支出:3万円

 

教育費がなくなり黒字で生活できるものの年金だけでは暮らせず、貯金を切り崩していくのも心配なため継続して働くことが必要です。

 

<75歳収支>

・合計消費支出:16万5,000円

 

【内訳】

食料:5万円
住居:1万円
光熱・水道:2万円
家具・家事用品:1万円
被服及び履物:5,000円
保健医療:1万5,000円
交通・通信:1万5,000円
教 育:0円
教養娯楽:1万円
その他の消費支出:3万円

 

75歳になってマイホームのローンが終わり、ようやく年金暮らしができそうです。

 

ちなみに、総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の一般的な生活費の平均は下記となります。K氏の生活費は、平均並みといえます。

 

<2020年度、65歳以上の夫婦のみの無職世帯>

・合計消費支出:22万4,390円

 

【内訳】

食料:6万5,804円
住居:1万4,518円
光熱・水道:1万9,845円
家具・家事用品:1万0,258円
被服及び履物:4,699円
保健医療:1万6,057円
交通・通信:2万6,795円
教 育:4円(※)
教養娯楽:1万9,658円
その他の消費支出:4万6,753円

※内訳における教育の割合は統計上0.0%

(出所:総務省統計局 令和2年家計調査年報家計収支編)