「死ぬまで働かないと暮らせない」Aさんの絶望
それでは、この不足額に対して、預貯金や生命保険の死亡保険金がない場合、どうしたらいいのでしょうか。答えは、働いて収入を得るか、もしくは支出を極限まで切り詰めるかしかありません。
しかし、毎月15万円の生活費というのは、そんなに贅沢をしているとは考えにくく、支出を切り詰めるのには限界があります。
65歳まで働いても、積立運用をしても「1,000万円」以上の資金不足
今回の想定では、その後45歳から60歳までは額面300万円、61歳から65歳まではその6割程度の年収になることとします。
年収300万円の額面ですと、簡易的な手取り計算では80%程度となりますので、240万円(月々20万円×12ヵ月)となります。また61歳以降の6割年収180万円の額面ですと、手取りは約147万円(月々12.25万円×12ヵ月)となります。
この収入を先ほどの不足額に当てはめてみると、
5,700万円-4,335万円=1,365万円
と、1,365万円の不足が出ることになりました。
そこでAさんは、60歳になるまでは、毎月の生活費との差額で生まれる5万円を「積立運用」に回すことを考えました。(今回は、3%複利としました)
すると、[図表3]のように、900万円の原資は約181万円(税引き前:約227万円)増加。しかし、これでも「1,365-181=1,184万円」と、不足を埋めるまでにはいたりません。
そこでAさんは、よりリスクの高い運用にチャレンジしようと考えました。しかし、知識のない自分がそんなことで大元の財産を失っては元も子もないと考えを改め、最終的には65歳以降も元気なうちだけでも細々とバイトを続けることにしました。
[図表2]によれば、女性の健康寿命は約75歳となっておりますので、その後腹をくくって手取り100万円程度の仕事を10年ほど続け、それでようやく不足分を埋められるかどうかというところです。
彼女が元気で居続け、安心して仕事を辞められる日はいつになるのでしょうか。
もしもご主人がご存命のうちに、きちんとした資産形成を進めていたら……あらかじめ個人事業主の国保の手薄さを知ったうえで、必要な保障の設定をしていたら……。
頭を抱えつつも、日々の仕事に追われる暮らしは続いていくのでした。
宮本 誠之
FP Office
ファイナンシャルプランナー